余命僅かな天使たち
□初めの天使の死
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コンビニで軽く買い物をして、避暑の為、人通りの少ない小さな公園に行き、ベンチにもたれた。
木々のに木漏れ日が差し込みそれが心地よい。
時折、涼しい風が吹き木々が揺れる。
このまま、時間が停まってしまえばいいのにと思ってしまうほど静かにゆっくり流れる。
日が傾き始めた頃、その女はやって来た。
その女は、公園にいる路上生活者一人一人に声をかけて回っている。
この公園に避暑に来ている路上生活者は俺だけじゃない。
この暑さのせいで夏になると毎日、老若男女、女子供、老人、外国人まで、年齢、人種関係なくこの公園に集まっている。
一通りの路上生活者に声をかけ、俺の所に来た。
『…?』
女が俺にある事を問う。
「…。」
その問いに俺は、一つ返事で答える。
「わかったわ…。私と生きましょう。」
女は、俺の答えを聞いてそう言うと俺を車に乗せてどこかへ連れて行った。
俺をどこに連れて行く気だ…。
何もわからないまま、車に揺られていると女の方から声をかけてきた。
「喉、渇いてるでしょう?水、飲む?」
女は、それだけ言って小さなペットボトルを俺に手渡す。
・
手渡されたペットボトルを素早くひったくり、何の躊躇なく、それを飲んだ。
変な味がした。
だけど、死ぬほど喉が渇いていたので構わず全部飲み干した。
車に揺られていると俺の身体に異変が現れた。
なんだ?
頭がぼーっとしてきた…。
眠たいわけじゃねぇのに猛烈な眠気に襲われた。
そして、俺は、そのまま意識を手放した。
俺は、再び夢を見た。
『相馬君が行方不明になって、もう1年か…。』
『うぅっ!どこ行ったんだよぉ!空海ぃ!』
『お兄さんたちも必死で探してるのに、なんで見つからないんだ…。』
『もしかして、死んじゃたとか?』
『りま!不吉な事言わないでよ!』
・
高層マンションの最上階に着いた女は、帰ってきて早々に服を下着まで脱いだ。
俺は、ソファーに寝かされ生理食塩水を点滴された。
その点滴に書かれている名前を見て俺は、飛び起きた。
「月詠…歌唄?ってもしかして、お前、アイドルの!」
「えぇ、そうよ。…はぁ、せっかく私が分けてあげた命を粗末にしないでよね。」
「えっ?命って…あっ!」
そう言われてあの時観た夢の事を思い出した…。
「まさか、俺に肝臓を提供した奴って…。」
服を投げてそれに続く言葉を遮断された。
「これ以上見ないで!」
「なんだよ…。」
・
女…もとい、アイドルの女はバスタオル一枚という姿で俺のいるところに戻ってくるやいなや俺に“服を全部脱いで裸になれ”と言った。
俺がそれを拒むと俺の方へ歩み寄る。
腕を掴み、点滴の管を抜くと、そこを消毒して絆創膏を貼る。
「これで一人でも脱げるわよね?」
えっ?
もしかして、もしかしなくても、こいつ、勘違いしてる?
必死で抵抗するが、痩せ細り体力のない俺はアイドルの女の力には敵うはずもなく、生まれた時の姿にされた。
「…あんた…。」
アイドルの女は、それだけ言うとハァとため息を漏らし、俺をひょいっと抱えて浴室に戻った。
「シャワー、熱かったら言いなさい。」
俺を浴槽に寝かせ、それだけ言ってシャワーの蛇口を捻った。
シャワーのから、温かいお湯が勢いよく出て俺の体を濡らす。
アイドルの女は、俺の体を頭から足の爪先まで丁寧に洗う。
体を洗っている間、何も話さねぇ。
俺も何も話さず白い天井を見ていた。
体を洗い終えて脱衣所で体をガシガシ拭く。
女の寝室のベッドに寝かされ、俺の腕に薄いピンクの液体を注射した。
女は、部屋の隅で錠剤を数粒口に放って水を飲んでいる。