余命僅かな天使たち

□初めの天使の死
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アイドルの女…歌唄と暮らしはじめて1ヶ月…。

「うっ…あっんっ!イクト…イク…ト…やぁぁっ!」

今、俺は、目隠しをして歌唄と現実逃避の真っ最中。

こいつは、俺とヤる時いつも、俺の事を自分の兄貴の名前で呼ぶ。

似ても似つかない
俺とヤることで辛くて退屈な闘病で会えない寂しさを俺で解消しているんだ。

「うっ…おれ…もう…うわぁ…っ!」

「あっ…きゃああっ!」

俺は、歌唄のナカに放って逃避は終わった。
逃避が終わると俺と歌唄は後始末をして風呂に入った。

「お前、また痩せただろう?ヤる時、擦れて痛ぇんだよなぁ…。」

「悪かったわね!痩せたくて痩せてるんじゃないわ。」

「そうだったな。悪かったよ。」

逃避を終えて、風呂場でシャワーを浴びて、洗い立ての服を着る。

脱衣所の鏡に映った身体がちらっと見えた。

俺は、日を追うごとに元気を取り戻し、筋肉もついて以前の姿に戻ってきた。

だが、それに比例するかのように歌唄はげっそりと痩せ細っていった。

これも病気によるものらしい。

「空海、私の…あっ、やっぱり自分で探すわ。」



「わぁっ…!」

「危ねぇ!」

足が縺れて何もない
の床で跌きそうになった歌唄の腕を咄嗟に掴んだ。

その腕は、骨と皮膚だけで筋肉がなく、力を入れなくても簡単に関節から外れそうだ。

「ちょっと…。」

気がつくと俺は歌唄の体を強く抱きしめていた。


「あっ、すまん!今日は…もう寝ろ…。」

「えぇっ、私、また動けるわよ!」

「ダメだ!無理すんなってイクトも言ってたろ?」

「…わかったわよぉ…。」

そう言うと大人しく寝室のベッドに横になった。

歌唄は、実の兄貴である月詠イクトに恋人以上の感情を抱いている。

もしかして、俺にも?

まさか。

そんなはずないと思いたい。

「だけど、ずっとここにいて大丈夫か?アイドル活動、忙しいんじゃねぇか?」

「その心配はないわ、アイドル活動はずいぶん前に辞めてるから…。」




「私の病気、あんたにも感染してるの…。」

俺は、今、日本で爆発的に感染が拡大している“停滞症候群”って病気にかかっている。

歌唄の肝臓を移植したのが原因なのか、血液感染なのか、はっきりとはわからない…。

でも、これだけはわかる…。

俺は確実に死ぬ…。

「でも、安心して発症してもすぐには死なないわ。」

「それは、お前を見ればわかるよ。」

「昔…。」

「うん?」



「イクトのお嫁さんになりたかったの…。」

「そんで?」

「そんで?って、驚かない?」

「なんで、驚かねぇといけねぇの?お前を見りゃ、わかるよ。」

「そう…。あんたって優しいのね・・・。」

「まっ、まぁな!インスタントしかねぇけどとんこつラーメン作って来る!」

歌唄に言われた言葉が照れ臭くて早口でそう言ってキッチンに行く。

手早く作り、持って来る。

「ほら、少しは食え。食える時に食わねぇと体持たねぇぞ。」

俺は、れんげに麺を一口分に丸めて歌唄の口に運ぶ。

歌唄は、もぐもぐと何回か咬み、飲み込んで一言。

「不味い…。」

へっ?と思い、俺も一口すする。

「美味いじゃん。」

それを聞いた歌唄ははぁと呆れたとため息を漏らす。

「あのね…。あんたは、生きる為に食べてるかもしれないけど、私は、薬を飲む為に仕方なく食べてるのよ?」

「そうか?」

「いつか、あんたもわかるわ…。」
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