余命僅かな天使たち

□初めの天使の死
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「私も詳しくは知らないけど、私が生まれる前…まだ私が母親の胎内(おなかのなか)にいた時、母親が事故に遭って手術したんだって…。」

歌唄が語っている間も俺は、身の回りのことをする。

「その時、輸血した血液の中にこの病気の病原体があって、母親は、それに感染して…胎内にいた私にまで…。」

そこまで言って歌唄は、掛布団に顔を埋め、ギュッと握る。

「どうして…母親と同じ病気に感染したのに…どうして私だけ、発症したの…。」

「もういい…。」

俺は、下唇をギュッと咬み、話を寸断しようと


「私が、あの女に何をしたっていうの…!」

「もういいっつってんだろう!」

俺は、勢いで壁を叩いた。

「これ以上…言うな…聞きたくない。」

歌唄は、ビクッと
ごめんとだけ言ってうつむいてしまった。

「ねぇ、空海…キスしてくれない?」

「えっ!?」

その一言で、手が止まった。

「いっ、今…なっ、なんてった?」

手が小刻みに震える。

「“私とキスして”って言ったの…私、もうダメかもしれないから…。」

「そんなこと、言うなよ!そんなこと言われると俺が今までお前にやって来たことが…ムダになるだろう…。」

歌唄をゆっくり起き上がらせて

「頼むから…そんなこと言わないでくれよ…。俺が…俺が今ここにいるのは、お前を一分でも、一秒でも長く生かしてやることしか出来ないからだ…。」

歌唄を背後からゆっくり抱きしめて、今まで、隠していた俺の本当の想いを言って聞かせた。

「俺は、お前に…命をもらったんだよ…。あの時、声をかけられてすぐにわかった。お前は、俺に生きること…生きていいってことを教えてくれた…。」

「空海…ごめん…。そうだったわね…。」

歌唄は抱きついている俺の手をそっと触れて謝る。

「歌唄…俺、お前の…欲しい。」

「私も…。」

俺たちは、服を脱いで生まれた時の姿になった。

俺は、歌唄に馬乗りになり、最後の現実逃避をした。

お互い目隠しはしない。

お互いの顔をしっかり目に焼きつけるように見つめ合う。

「きて…空海…。」

歌唄の言葉を合図にゆっくりとお互いの存在を確かめるようにキスをする。

「うっん…。キスだけじゃ、ダメ!空海のが欲しい!空海、きて!」

俺は、ふっと鼻で笑い俺自身を取り出して俺の想いをぶつけた。

「うっ…空海…くうっ、私を見て…私だけを信じて…!」

「あぁ、お前だけを見てるよ…!俺が、信じてるのは、お前と俺だけだ!うっ…!」

「空海…!――…。あぁっ!」

歌唄は、最後の言葉を耳元で囁いて俺と一緒に果てた。

俺は、歌唄への感謝の気持ちをナカに注ぎこんだ。

現実逃避を終えた俺と歌唄は、何も語らず、手を握った。

「歌唄の手…あったかいな…。」

「あんただって…。」

それを言って俺と歌唄は、笑った。

「やっぱり、信じてるのね…。」

「うん?」

「あんたは、私だけじゃなくて、自分も信じてたのね…。」

「あぁ。なぁ、歌唄…。」

「ん?」

「好きだ。」

俺は、歌唄に軽くキスをした。

「もう、知ってるわよ。」

ふっと鼻で笑ってそう言うと、俺の体を抱きしめて、胸に顔を


「動いてるね…空海の心臓。」

「うん。なんなら停まるまで、聞いてていいぞ?」
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