死が二人を別つまで〜ANOTHER if...〜
□唯一の世界
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―あなたは、大切なものを無くしたことがありますか?
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僕は、ある建物の地下へと続く階段を下りていた。
階段の途中で一枚のドアが行く手を阻んだ。
そのドアを力一杯開けると奥へと続く長い廊下があった。
「待ってて…絶対に助けてあげるよ…相馬君!」
廊下を
灯りがついたドアを開けるとその人はいた。
「やぁ、辺里君…遅かったじゃないか。
」
「やっぱり、あなただったんですね!二階堂先生!」
「ちょうどよかった。彼で遊ぶの飽きちゃったから捨てるところだったんだ。ほら、返すよ。」
ベッドに寝かされ、後ろ手に手錠をされている相馬君のところに駆け寄った。
「相馬君!しっかりして!」
「煮るなり焼くなり君の好きにするといい…。」
「あなたって人は…。」
「なんだ?それじゃあ、君が僕と遊んでくれるっていうのかい?」
相馬君を抱きしめて睨む僕の顔を持ち上げ、冷たい口調で言った。
「僕は、相馬君を助けに来たんだ!誰があなたなんかに!」
・
「冗談さ。どーせ、君と遊んでも5分もしないうちに飽きちゃうよ。」
そう言って鼻で笑った。
「どうしたの?彼を助けに来たんじゃなかったのかい?早くしないと本当に君で遊んじゃうよぉ?いいのかなぁ?」
二階堂先生は、鍵を僕に投げてよこした。
僕は、その鍵で気を失っている相馬君の手錠を外して、彼をおぶった。
「二階堂先生…あなたは、最低な人だ!」
元来た道を走って戻り、地上に向かって走った。
僕の両肩に相馬君の重みがのしかかる。
「相馬君…絶対に助けてあげるよ…。」
一歩、一歩、また一歩と地上に近づいている。
「あっ!うわぁっ!ったい…。」
足が縺れて何もないところで転んでしまった。
・
地上では、月詠イクトが待っていた。
「遅えよ、唯世。」
「うるさい!これでも走って来たんだ!」
「で、こいつは、大丈夫なのか?」
「あぁ、薬で眠らされてるだけみたいだ。」
「とにかく、どこか安全なところに運ぼう。ここはヤバいからな。」
「うん…。」
相馬君を彼におぶってもらって近くの公園に来た。
相馬君をベンチに寝かせ、水で濡らしたハンカチを、額にのせた。
「…うっ…。」
相馬君の目がゆっくりと開いた。
「相馬君!よかった。」
「あれ?ここ…どこ?おじちゃんたち、だぁれ?」
「えっ?どうしちゃったの?相馬君?」
「待て唯世、様子が、変だ!」
相馬君は、ゆっくり起き上がり、キョロキョロ回りを見渡す。
「ねぇ、ゆうおにいちゃん、どこにいるの?」
「ゆう…おにい…ちゃん?」
「どうやら、こいつもあの薬を投薬されちまってたようだな。
あの薬を改良していたのか…二階堂さん…。」
「あの薬って?」
「二階堂さんしか愛せなくなる薬だ…。同じ薬をあむにも投薬されてな…薬が抜けるまで大変だった。」