P歌姫P
□ホワイトシンフォニー
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さぁ、歌いましょう。
風が奏でるメロディーを・・・。
さぁ、踊りましょう?
空が示すダンスを・・・。
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しんと静まりかえったホールに凛とした歌声が響いた。
軽やかなステップでその歌姫は踊りだす。
それは決意の証だった。
ギュランダル議長が討たれて一見全てがおわったように見えたが、プラントは指導者を失い混乱に見舞われていた。
もう二度とこんな惨劇が起きないようにと、クライン派の強い推薦もあり”ラクス”に白羽の矢が立ったのだった。
それは自由がなくなるということだ。
そして時には、残酷な決断を迫られることもあるだろう。
自らが望んでなくても、、、だ。
「すごいな・・ラクス綺麗だ。」
このコンサートに呼ばれた極一部の人間。カガリ・ユラ・アスハは呟いた。
誰に言ったわけではないが、隣に座った双子は返事を律儀に返す。
「うん。これが、プラントの歌姫なんだ・・・」
他の誰でもない。
彼女が、プラントの歌姫・・。
表面だけでもない。ただのお飾りでもない。
本当の辛さ。真実の愛。戦う事の悲しみ。そして傷を知っている彼女。
それが、歌姫。
自分に道を示して、力を与えてくれたんだ。
・・・その事を思うだけで、キラ・ヤマトは、全身に走る何ともいえない高揚感を感じた。
「・・・・・」
誰もが、その妖艶とも癒しとも取れる雰囲気に飲まれる中、やはり少数の選ばれた人。
アスラン・ザラは、ただその様子を傍観していた。
「(違う。本当の彼女はこんなに強くはない。)」
凛々しい仮面を身につけて踊る彼女は、彼女ではない。
誰もが、だまされてるんだ。
誰も本質に気がつけないまま、彼女を奉り、縛るのか。
彼女は庭で無邪気に笑い、花に包まれた妖精でこそなのに・・・。
そんなことを一人で考えこみながら、アスランはひどい脱力感を感じていた。
・・そして同時に、彼女に対して、他のものにたいして、哀れみすらも感じていたのだ。
「(でも、本当に哀れむのは、自分自身・・か。)」
本当の気持ちに気がつかないふりをしたままの・・・
嘲る笑みを浮かべたアスランは、誰とも会話をせずにそっとその場所から立ち去った。
己の過去から、逃げるように・・。
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一話一話が読みきりな記念すべき第一話・・!
主には、アスランとおまけでキラですね・・笑
次あたりは、ラクスの話を・・・