P翡翠P
□翡翠の風
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*翠の風*
ざわっ…
それはいきなりルックの中に来た。
一言で言ってしまえば嫌な予感。
「……レックナート様」
思わず師にすがりたくなるような不安と焦りを悟られないように、ふと隣にいる師に目線を合わせる。
「ルック…星が動きました。」
やはり…。
ルックと呼ばれた少年は内心そう思ったが表情には出さずにただ冷静に返した。
「…そうですか。分かりました。星見結果は何と書けばよろしいですか?」
「赤月帝国に今争いが起こることをつたえても…混乱するだけでしょう。差し障りのない程度に書き換えておいて下さい。」
「はい…。」
師に自分の仕事を確認するとルックはそそくさとその場を去ろうとした。
そこは師が星見というものを行なう時にだけ使われる部屋だからだ。
星見は時に世の中の流れを見る。ルックはこの部屋にこれ以上いたら何かに巻き込まれそうな気がしていた。ただでさえ面倒なことが嫌いなルックにとってそれは絶対に避けたいことだったのだ…。
しかし…
「お待ちなさいルック…あの星が見えますか?」
「…あの星…?」
師に言われ振り返った先には星見みが終わり他の星がもとの位置に戻っていくなか何かに引き付けられるような一つの星があった…。
「ぁ…。」
「わかりましたか…?そうです…」
赤く光星…
それはルックにこれから起こることを容易に想定させた。
また…はじまる。
幾度なく続く連鎖の炎
己の定め。
迷い
怒り
悲しみ
決意。
「ルック…あなたはこれから天間星という定めにあるでしょう…。どうかあなたを運命が守ってくださるように祈りましょう…。」
「……はい。」
師の言葉を聞き流しながらルックは部屋をあとにした。