P翡翠P

□風乃舞姫
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〓風乃歌姫〓
〜序章〜

皆が寝静まってしまうほどの夜中に軍主は付き人の視線を盗み城をぬけだした。
向かったのは城の隣にある小さな森。
滅多に人が近づかないソコは軍主の密かな、安らぎの場所へとなっていた。

「はぁ……」

いつもとは違うラフな寝着で森の湖へ向かう。

今日は右手がやけに疼く。何かを指し示すように…

「ん…??」

ふと湖に近づいていくに連れて聞こえてくる歌声に軍主であるナギ・マクドールは怪訝そうな表現を浮かべた。
今は深夜。
そして段々聞こえてくる歌声は確かに少女の物だった。

何故こんな夜中に少女が――?

降り積もって行く疑惑に自然にナギの足も早くなっていく。

ガサッ―――


「ぁ―――・・・!?」


「!?」


湖に着いてまず入って来たのは月夜に照らされた髪の長い少女の幻想的な姿だった。
少女は水浴びをしていたのか衣服を纏っておらず、腰まで伸びたサラサラな髪で胸と秘部が隠れていた。


「お前は………?」


その姿に不本意ながら目が反らせなくなってしまい、無意識にナギは声を掛けていた。
それに驚いたのか少女は途端にかぁあっと頬を朱に染め、一歩後退りをした。

「おいっ…待てっ!!」

少女の周りにシュウウッと集まる魔力の流れを感じ、ナギは慌てて手を伸ばす。

「い…や……!!!っ……ンッ」


しかし、それも一歩遅く少女を風が包むとまばゆいほどに髪が宙に舞い光の中に少女は跡形もなく消えていった。


「今…のは………?」



その場に一人取り残されたナギは、思わず呟く。

今の声、今の魔力の気配。そして何より、最後に見た少女の翡翠色の瞳。

それは容易にある人物を連想させた。
初対面で、クレイドールを仕掛けて来た風の申し子。

「…ルック……?」


唇が形を作れば声を紡ぎだし、それは闇夜に消えて言った。

一陣の風と共に―――。
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