P翡翠P
□kiss
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自分でも馬鹿みたいだって思う。
こんな、気持ちを持つことは許されないのに。
でも、アイツにはまってしまうんだ。
**********
その日は少し肌寒い日だった。
夕日も傾き、皆が部屋に戻ろうとしているとき僕はここにいた。
「…ふう」
石版を背もたれにしてぱらぱらと手にもっている本をめくる。
もう何時間そうしていただろうか?ふと肌に感じる気温の鋭さに顔をあげて窓を眺めた。
「あ……」
思わず窓の外の光景に声を漏らしてしまう。
薄暗いそこには確かに誰かがいた。しかもしっかり抱き合って。
そんなことに疎い僕は少なからずかぁと頬が上気してくるのを感じた…
「っ…あ、スイ様すみませんっ!!」
「いや、カスミ。私こそすまなかった。」
ーーーーーーーーーえ?
どくん。
次の瞬間の声に思わず離した目線を戻してしまう。この声と、あのシルエット。
間違いなかった。彼だ。
僕が最近やたらと気になる軍主、とおそらくそれに想いを寄せているだろう忍者の娘。
「何…動揺してんのさ、馬鹿みたい」
相手が誰だと認識したとたん襲ってきた恐怖にもにた感情。
こんな感情僕は知らなかった。
「っ…人形が…馬鹿みたい」
どくん
どくん
心臓がうるさかった。
自傷気味に呟いた僕の声は闇に囚われたようにも感じとれた。
そんなのを認めたくない僕はすぐさまその場から風を身に纏い飛んだ。
**********
「あいつが誰と何してようと、関係ないのに…」
部屋に戻った僕はベットに凭れ掛かったまま床に座り込む。
「あいつにだって、そっちのほうがいいんだ…きっと。」
まるで自分に言いきかせるかのように繰り返した。
そのたびに軍主が忍者の娘に優しくしている姿が脳裏に浮かぶ。
----------シーナがいつか言ってたな
好きな奴は身体が繋がったときめちゃくちゃ気持ちいいんだってよ?
そんな風にあの二人も・・・
「ルック〜?」
「っ!???」
自分の考えに息が詰まりそうになったとき不意に扉の外から声がかかった。
「寝てんのか〜??」
……シーナの声だった。
「何?」
出るつもりなんて普段はなかったんだけど、気がつけば扉を開けてる自分がいた。
「おっ♪めずらし〜じゃん」
「…何、何の用?」
そんな陽気な相手を威嚇するように睨みつける。
「ご機嫌斜め?…ま、いいけど。ルックにプレゼント」
「は?」
そんな僕の態度にも怯まずに何かの包みを渡してくるシーナ。
思わずそれを受け取って中を覗きこむ。
…何かでこの考えを否定したかったのかも知れない。
考えないようにしたかったのかもしれない。
「……サクランボ?」
かさっと音を立てて取り出したものはぞっとするほどに熟れ真っ赤になっていたさくらんぼ。
「どうだ?うまそーだろ♪俺が採ってきたんだぜ?だから特別にお前だけに差し入れ。ルックってあんま飯食べないだろ?だから、他の奴には秘密な?」
「…あ…りがとう。」
僕だけに持ってきてくれたんだ。
不思議に嫌な気持ちはしなかった。
それどころか、不覚にもちょっとときめいている。
「じゃぁ、それだけだから」
そんなに僕のお礼が珍しかったのか、シーナは破顔させながら今来た道を戻ろうとしている。
考えるより先に、手が動いていた。
「……あ」
僕の手はシーナの服の裾を持って離さない。
「ルック…………?」
その体勢のまま固まってしまった僕にシーナは不思議そうに問い掛けた。
でも、僕は動かない。。ってか、動けなかった。だってどーしろっていうわけ??
この状態で…まるでシーナに帰って欲しくないような……これってお誘いって感じで。
お誘い…………?
「っ…?!!!!!///」
そこまで考えて僕は初めて自分がやったことの意味を理解する。
「…ルック……」
気がつけば間近まで迫ったシーナの顔。
さり気無く肩に手をまわされて、引き寄せられる。
「ちょっ…シーナ待っ……//」
だんだんと唇が近づいてきて、僕も思わず瞳を閉じる。
ダァン!!!
「ぐへ!??」
その瞬間に聞こえてきた鈍い音と、シーナの声。
おそるおそる目をあけてみると、そこにはスイが居た。
「……え?」
この展開に、ついていけない僕。
だって、スイは…今ごろ、あの忍の娘と……
「な…んで…?カスミさ、んは?」
情けない話、理性が聞かず声が表に出てしまっていたらしくくるりとスイが僕を見る。
「見て、たのか」
ズキッ
そのスイの表情に胸が痛んだ。
そんな切なそうな顔して、僕を見ないで。
「ッ…心配しなくても…い、わないよ」
分かってる。
分かってる。
こんな想い、知られちゃいけない。
どんな形でも傍にいたいなら、捨てなくてはいけない想い…。
ちゃんと捨てるから。
今は、触れないで……
祈るような気持ちで目を閉じた僕に降ってきた言葉は、予想もしないもので。
「好きだ」
思い切り思考が止まった。
「え?」
自分は都合のいい夢でも見ているのだろうか。
そう考えているうちに、手を引かれ僕はスイの腕に抱きこまれた。
「好きだ。」
もう一度低く囁かれる。
「さっきのは、告白されて断ってたんだ。そうしたら、ルックの気配がして…誤解されたと思って、慌てて追いかけたら……シーナとキスしようとしてて、押さえ切れなかった。」
ごめん。
とまた囁かれじんわりしたものが僕の中にこみ上げてきた。
「……僕も、好き」
無意識のうちに呟いた言葉に、今度はスイが驚いたような表情をしていて少し笑えた。
「…ルック、好きだよ?」
「知ってる。」
「ルックは?」
「…スイが…スイだけが、好きだよ」
はにかむようにお互いが笑いあって、そっと唇を合わせた。
初めて想いが通じた夜、僕は倖せを知ったんだ。
こんな僕でも恋をしていいですか?
こんな僕でも、倖せを感じていいですか?
人形だったけど、スイが教えてくれた痛みと快感は、僕を人間にしてくれた。
願わくば、このkissに永遠を誓えますように。
愛という名の永遠を……
**アトガキ**
はふぃ…
やっと書きあげましたv
これはそれほど、時間がかからなかった物ですvv笑
感想などありましたら喜びますです♪