P翡翠P
□翡翠の風
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それから数日が過ぎた。
予定ではもうそろそろ、帝国兵士が星見の結果を取りに来るころだ。
そう思い、ルックが空を見上げたその時、
ざわっ。
「……来た。」
そいつの存在…
ルックにはすぐに分かった。
風が知らせてくれたし…何よりその手に宿した紋章が疼いたからだ。
「ルック…お客さまをお迎えして下さい。」
ほら…ね。
師のことばを聞き内心呟くが無言で立ち上がるとふっと礼だけをしてルックは塔の下に降りていった。
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「やぁ…初めましてお客さま?」
そいつらを見て皮肉をこめて言ってやった。
なんだ…こいつ。
本当に天魁星なのか?付き人ばかりつれて…。
ルックの第一印象はそれだった。あまりにも頼りない…。
そしてソイツより隣の魂喰らいにどうしても意識が行ってしまう。
「それじゃ困るんだよ…。」
誰にも聞こえないような声で呟くとすっとその手をかざし自分の僕(しもべ)を呼び出した。
「…僕は塔の下で待ってますよ。レックナート様もお待ちですから…お客様もいそいで下さいね。」
「なっ…!このガキっ!!まてっ!っっ…!」
「パーン落ち着け!」
「坊っちゃん…来ますよ!」
「ナギ…暴れてやろーぜ?」
「あぁ!」
そんな会話を聞く中でルックが最後に見たものは、ナギと呼ばれた少年の紅みを帯びた深い紺の瞳だった。
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奴らをレックナート様に引き合わせ、送り届けたあとルックはクレイドールのことに師からお叱りをうけ一人部屋に居た。
「…ナギ・マクドールか…。」
最後に見たあの紅の瞳。
深い紺の色に、混じって印象的だった。
「ナギ…」
何度目だろう…彼の名前を風に溶けるように甘く呟く。
あいつが、恐らくこれから仕える主となるのだろう。
運命は、どうなるのだろうか。
本当に変えられるか。
自分の、望みは----
「そんなにナギが好きか?」
「…なっ!?」
そこまで考えてふっと不意に囁かれた言葉。
それを合図に部屋はあっという間に闇の気配を帯びていた。