黒ネコ注意報?:2
□戻らない日常
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ガラッと扉が開いたと思えば、見慣れていながら見慣れないと思う姿。
右眼と額を覆う包帯。
セーターを着ていても、指の包帯は隠れない。
細い膝にも、スカートの丈から見える太腿にも、至るところに包帯が巻かれていた。
「彩夏・・・・・」
「おはよう、雲雀くん」
にっこりと笑う笑顔が、酷く痛いものだった。
呼び方が、距離を作る。
いつものことなのに、この時ばかりは嫌だった。
茶色の髪が、僕の横をすり抜けて行く。
「―――――」
掴む事さえ出来なかった。
これが、今の状態なんだ。
すれ違い様に言われた言葉に、僕は教室を飛び出して屋上へと走った。
これで、いいの。
私を見るたびに恭弥を苦しめるなら、傍にいても苦しいだけ。
だから―――――
『別れて』
2008.09.13