NL

□Every day life.
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なにもない
なにも見えない
真っ白の世界

見えるのは、黒い影
人の中の、醜い感情

信じない
信じない、なにも



…神様…

それでもオレは―――――





「華原君?」

隣を歩くクラスメイトに名前を呼ばれ、ハッと我にかえる。
……ヤバイヤバイ。ボーッとしてたよ…。

「どうしたの、大丈夫?」
「うん。サンキュ」

隣を歩くのは、クラスメイトの荻野梨恵。
利発そうな目と、さっぱりと切られた短めの髪が印象的だ。

「本当に? 保健室に行った方が……」

持ち前の面倒見の良さで、心配そうに顔を覗き込んでくる。

「大丈夫だって」
「…そう?」
「うん。だからコレ、運んじゃおうよ」

オレは先生に渡された書類の束を、同じように抱えている荻野に見せた。

「……そうね。運んじゃおうか」
「そうそう」

そのまま再び歩き出す。
だけど、次は後ろから名前を呼ばれた。

「おーい、華原、荻野」
「はい」

荻野がスッと振り返る。
オレは首だけ動かして見た。担任だ。

「運ぶもの、追加していいか」
「いいですよ」
「何を運ぶんですか?」

オレがいつものように返事をすると、荻野が担任に問い返す。
担任は申し訳なさそうに両手を合わせて、小さく言った。





「…しょうがないよね」
「これも日直の仕事なのよ。…たぶん」

オレたちは資料室に積まれた大量の本を見て溜め息をついた。

「量が半端じゃないし、分けて運ぶ?」

荻野が苦笑いで聞いてきた。
確かにオレたちは、すでに書類で両手が塞がっている状態だ。
……でも。

「ここ、往復するの?」
「そうなのよねぇ…」

ここはオレたちの教室から大分離れた校舎だった。
ちなみに教室にたどりつくには渡り廊下も渡らなければならない。

「……しょうがない。荻野、コレお願いしてもいい?」

手元の机に、元々持っていた書類の束を乗せる。
荻野はその上に自分の書類を乗せ、再び持ち直す。

「いいけど…、っまさか」
「よっ、と」

オレは目の前の本を一気に拾い上げた。

「だっ、大丈夫!?」
「…うん、けっこう平気。行こうか」
「けっこう平気って……あっ、待って!」
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