BL

□夢涙
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ぢりぢりとした暑い日ざし。
夏休み真っ只中の室内というのは、いろんな意味で身体に悪い気がする。

「…外に行こうかな」

雅紀は膝に乗せているシュタインを見て、ぽそりとつぶやく。
シュタインはそれに反応したのか、またはご主人様に見つめられて嬉しいのか、嬉しそうに尻尾を振った。

「少し早いけど散歩に行くか」

昼ごはん、何か調達しなきゃいけないし。
何か適当に買って公園の木陰で食べてしまおう。
そう決めてシュタインの手綱を引いた。



「あっつー」

予想通りというかなんというか。
外は真夏なだけあって、痛いくらいの日差しが容赦なく照りつける。
店の前は店員が水をまいたのかすこし濡れていて。
その水に反射する強い光に目を細めた。

「いらっしゃいませー」

中に入ると、いつもの可愛らしい女性店員の声が後に続く。
特に何も考えず適当に選んでレジに持って行こうとした時。
ひんやりとしたものが目に留まった。

「アイスか…」

こんなに暑いんだからひとつくらい何か食べよう。
雅紀は手前にあったフルーツ味のアイスを手に取ると、さっさと勘定を済ませて店を後にする。
外で待っていたシュタインは雅紀の姿を確認すると、おろしていた身体を上げてすり寄ってくる。

「お前は元気だな…」

ふうっと肩にかけたタオルで汗を拭う。
下を向いた刹那。
一瞬、視界がぼやけたような気がした。
ぽたりと落ちた一粒の雫を目で追う。
するとすぐにいつもの視界に戻る。

――気のせいだって…

雅紀は自分に言い聞かせて、シュタインの手綱を片手に公園へと歩いた。



「……はあ」

ちょうどよさそうな木陰を見つけると、雅紀はごろんと横になる。
と、同時に買い物袋のガサッと言う音が耳に付く。

「シュタイン、オレちょっと休んでるから…」

それだけ言うと、雅紀は静かに目を閉じた。



夢を見た気がした
懐かしい
あの日の夢…

シュタインの声が聞こえる
ああ、相手を威嚇してるんだ
……あれ?
違う、この声は――
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