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□Missing you.
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「ううん。大丈夫だよ」

隣を歩くのは、クラスメイトで同じマンションに住む桜川ヒトミ。
楽しそうに今日の出来事を話している。
不意に聞いてるだけだったオレに、控え目な顔を覗かせた。

「……違ったらごめんね。何か……あったの?」
「……うん。まあね」

やっぱり、桜川に隠し事は無理みたいだ。

「実は来月の末に、一週間サッカー部が合宿に行くんだ」
「えっ……」
「暫く学校も休むとと思う。マンションの方もよろしくね」
「う、うん。判った。頑張って来てね!」
「もちろん」
「ヒトミ先輩ーっ」

……出た。

「颯大クン」
「二人とも今帰りなの? ボクも一緒に行っていい?」
「いいよ。ね、華原君」
「……ああ」
「やりー! ありがと!」

なんで真ん中に入るんだ颯大。

「あのさ、雅紀先輩ってもうすぐ合宿だよね」
「ん? ……そうだけど」
「そっか、頑張ってね〜」
「……………」

なんだその超テキトーな応援。
と言うかオレがいない間、桜川を狙う周りの奴らが心配だな……。
特に颯大。
まあ普段から鷹士さんもいるし、大丈夫だとは思うけど。あの人にはオレも多少てこずってるしね……多少。

「あれ? ヒトミ、今帰りか?」

一台の車がオレたちの隣に駐車する。
中から鷹士さんが顔を出した。

「お兄ちゃん! お兄ちゃんも?」
「ああ。三人とも乗っていくか?」
「いいんですか?」

オレが一応聞いてみると、鷹士さんは桜川が見ていないのをいいことに、ふっと笑って。

「ついでだよ」
「……ですよね」
「ヒトミは助手席な」

オレたちは後ろか。
まぁ当たり前かな……。

「えーっ、ボク、ヒトミ先輩の隣がいい〜!」

オレ、時々こいつの性格が羨ましく感じるよ。同時に憎いけど。

「我が儘言うなよ。ほら、早く乗らないと迷惑になるぞ」

颯大をなだめながら自分も車に乗り込む。
と言うかオレも桜川の隣がいいに決まってるだろ。



それから暫くしてマンションについて車から降りる。
秋だからか空はうっすらと暗くなり、月が綺麗に見えた。もうそんな季節だなと実感する。
鷹士さんはオレたちを降ろすと、車を停めにそのまま移動した。

「じゃ、行こうか」
「うん!」

オレが振り返って二人に言うと、同時に元気な返答が返ってくる。
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