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□Missing you.
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エレベーターで桜川とわかれる。
オレと颯大の部屋は同じ階だから、颯大と並んで部屋に向かう。
桜川がいなければ、普通に友達みたいな奴だ。コイツの場合、けっこう誰にでもこうだけど。
自分の部屋の前で、ふと颯大に名前を呼ばれた。
手にした鍵の動きが止まる。

「ねぇ、雅紀先輩とヒトミ先輩って、付き合ってるの?」

ストレートに痛い質問するな……コイツ。

「……いや」
「そうなんだ! よかった〜」
「って事は、颯大は桜川狙いなのか?」

オレは不思議なくらい冷静に話していた。
……普段からこんな性格のせいか、ポーカーフェイスは慣れてるけど。

「まあね。だから、雅紀先輩だからって手を引くつもりはないよ?」
「……ま、頑張れ」

肯定はしないけど否定もしない。
そんなオレの態度が気に入らなかったのか、颯大は不満そうに眉をしかめる。

「ボクが見た感じ、今ヒトミ先輩と一番仲がいいの、雅紀先輩なんだ」
「へぇ。……あ、オレこのあとやることあるから、じゃあな」
「……うん。またね」

颯大は気付いていない。
本当に注意しなければいけない人物に。
そしてそいつらは、確実に桜川を狙っているんだ。

「……はあ」

敵は颯大だけじゃない。
そんなこと、最初から判っていた。

なのに。

「どうしてオレ、こんな面倒な恋してんだろ……」

誰に問掛けるわけでもないその言葉に、出迎えてくれたシュタインが不思議そうに首を傾げた。

「あはは。ただいま、シュタイン」
「ヴァン!」
「お前は、オレの見方だよな……?」

その時。
不意に玄関のチャイムが鳴る。
インターホンに手を伸ばした。

「はい」
『あ、華原君? 今いいかな』

――桜川?

『うん。……ちょっと待って』
「ごめんね夜に――わっ!! シュタイン!?」
「…っ!」

扉が開いたと同時に、隣にいたシュタインがオレを乗り越えて桜川に突進する。
……シュタイン、まさかお前も見方じゃないのか……。
いやいや落ち着けオレ。相手はシュタインだ。犬だ。ヤキモチ焼くには相手が悪い――大人になれ雅紀。
暗示のように心の中でそれを繰り返しながら、蹴られた場所を軽く押さえる。
そして桜川を見ると、見事にシュタインに押し倒されていた。

――ぶち。
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