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□花言葉-sweet-
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「お兄ちゃん、付き合ってほしい所があるんだけど…いい?」

ある日の日曜日。
俺の妹は、朝御飯を食べながらそんなことを言って来た。
そんなの、答えは決まってる。

「いいぞ。どこに行くんだ?」
「うん。神城先輩のお見舞いに行きたいんだけど……」

―――なにっ?

「見舞い…?」
「うん。でも何か持って行こうと思って…それでお花買いに行きたいの」
「そうなのか……」
「…だめ?」

ヒトミは不安気に覗き込んでくる。

「いやっ、大丈夫だ」
「よかった! ありがとう、お兄ちゃん」

この笑顔に弱いんだよな……昔から。
ヒトミの笑顔が見れるなら、俺はきっとなんでもする。
……例えそれが他の男の為だったとしても……俺は…俺はァァァ!!

「お、お兄ちゃん? どうしたの?」
「ん? ああ、何でもない。じゃあ準備したら行くか」
「うんっ!」



来たのは近くの花屋さん。
様々な花が並べられている。

「どんなのが良いんだ?」
「う〜ん…神城先輩の好きそうな花がいいと思うんだけど」
「神城か、何が好きなんだろうな」

二人で店内を見て回っていると、ヒトミが不意に立ち止まる。

「あ、アネモネ!」
「アネモネはやめた方がいいぞ。花言葉が『儚い希望』、『見放される』、『恋の苦しみ』だからな」
「な…何で知ってるの、お兄ちゃん…。ま、まあそれはやめた方がいいかな」

ヒトミは『何故か神城先輩も花言葉、詳しそうだし……』と呟いた。

「他には何かないかなー」
「お、水仙だ。これとかいいんじゃないか?」
「確かに先輩らしい気も……。ちなみに花言葉は?」
「さ、さぁ? ちょっとド忘れしちゃって……」

いっ、言えない……。
『自惚れ』なんて……。

「や、やっぱり水仙はやめよう! な!」
「え? ど、どうしたのいきなり…? でも、他にも見たいね」

ヒトミは水仙を一先ずその場に戻して、再び他を見て回った。

「んー…中々決まらないね」
「けっこう難しいもんだな……」

お兄ちゃんが花言葉なんて言ってなかったらけっこう早く決まってたよ。
と言うツッコミをする役は残念ながらいなかった。

「ヒトミ、花言葉も良いし、これにしたらどうだ?」
「え、なになに? ……鈴蘭?」
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