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□花言葉-sweet-
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「ああ、鈴蘭台の花言葉は『幸福が訪れる』なんだ。神城にピッタリだろ?」
「…っ、うん! 私買ってくる!」
「じゃあ兄ちゃんは車で待ってるから」
「わかった」

俺は車へと歩いた。
……神城か。
確かに他の奴らよりは安心な気はするんだが……だが……。
俺は振り返って、小さな背中を見つめる。

「まだ、俺だけの妹でいてくれよ…?」

その呟きは、外の風にかき消された。



「すみません、これ下さい」
「はい。鉢植えにしますか? 花束にしますか?」
「あっ、花束でお願いします」

店員は鈴蘭を置いて、ラッピングをはじめた。

「……、あの」
「何でしょうか?」
「他に探してる花があるんですけど……」



「ヒトミ、遅いな……」

俺は先に車に帰ったことを少しだけ後悔していた。
すると、店内から鈴蘭の花束を抱えた少女が目に入る。

「お兄ちゃん、お待たせ」
「ちゃんと買えたな。じゃあ、病院に行くか?」
「…うん」

ヒトミが助手席に座り、その返事を合図にしたように車を走らせる。

「神城先輩、喜んでくれるかな?」
「ああ、きっとな」
「だったらいいな……」





「神城先輩、いますか?」
「やぁ、来てくれたんだね。……鷹士さんも」
「……………」

その間はなんだ。
だが、ヒトミはそんな二人のやりとりに気付く様子もなく、花束を神城に渡した。

「神城先輩がよくなるようにって買って来たんです。貰って下さい」
「わぁ…ありがとう」
「選んだのはお兄ちゃんなんですよ」
「……鷹士さんが?」
「まあな」
「ありがとうございます」
「……いや、早くよくなれよ」

なんだ……やっぱり神城はいいやつだ。
ただこう言う風に病弱なのは心配だけどな…。

「お兄ちゃんといろいろ見て回ったんですよ。アネモネとか水仙とか」
「……へぇ……」

な、何だか神城の視線に鋭さが……。気のせいか?

「それはありがとうございます。鷹士さんはマリーゴールドって感じですね」

やっぱり神城は花言葉に詳しかった。

「なんだ? やっぱり水仙がよかったか?」

二人の間には、花は花でも見えない火花が散っている。
それに気付く訳もなく、ヒトミは二人が仲良く会話しているので嬉しく思っていた。
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