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□Every day life.
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両手が完璧に塞がってるオレの代わりに、荻野が資料室の鍵をしめる。
そのままオレの一歩後ろをついてきた。

「……………」
「……………」

さっきまでも決して賑やかに話していた訳ではないのに、オレたちの間には妙な沈黙があった。
昼休み独特の生徒たちの声。
走り回る男子生徒。
さっきより、よりはっきりと聞こえる。

「あっ、華原君!」
「何してるの? あ、日直だったよね」
「私たち手伝ってあげようか?」
「ぉ、っと」
「あっ…」

急に周りを数人の女子生徒に囲まれ、少しよろめく。
けど、オレだけならまだよかった。
女子生徒に押されたのか、それともびっくりしたのか、荻野は手にしていた書類の山を落としてしまった。

「あ、ちょっと踏まないで……」

荻野は書類を慌てて集める。
その様子を見かねて荻野に近付く。
すると、周りを囲んでいた女子たちがオレの腕を引っ張った。

「早くしないと昼休み終っちゃうよ、私たちと一緒に行こっ」
「え……あっ」
「きゃっ!」

抱えていた本の一部が滑り落ちる。
オレの腕を引っ張った女の子が、短い悲鳴をあげた。
オレはとっさに軽く目を瞑って、ゆっくりと開く。
…バサッと。
本の落ちる音がした。

「あ……」

女の子は床にペタンと座っている。
…荻野が、とっさに彼女の腕を引いてかばったようだ。

「…あ、あの」
「危なかったね〜。大丈夫?」
「あっ、はい……」

まるで今荻野の存在に気付いたかのような反応だった。

「ねぇ、君たち」
「なっ、なに? 華原君」

いつものように笑顔で話しかける。

「この本、教室まで運んでくれないかな? この人数ならたいして重くないと思うし。これで、おあいこね」
「う…うん!」

荻野にたいする罪悪感が少しはあるのか、女の子たちは個別に本を抱えて足早に去っていった。

「大丈夫?」
「うん。書類はなんとか…これくらいなら落としたのばれない…かな?」

と、荻野は書類を広いながら確かめるように言った。

「書類もだけど、荻野は?」
「私は大丈夫だよ。それより、彼女たちに任せてよかったのかな……」
「大丈夫だろ。オレもちょっとラッキーって思ったし」
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