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□Dark Side.
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もうすぐ、夜の帳が下りる頃だ。
公園の芝生で寝転んでいたオレとシュタインは、ふとその事に気が付いて起き上がった。
今日は長い時間寝過ごしてしまった。
そのせいか何だかさっぱりしない。帰ったら風呂に入ろう。

「……? シュタイン?」

シュタインが急に反応して走り出す。
手綱を引かれ、そのままシュタインについて行った。
抵抗する程力が入らなかった。

「わっ…きゃあ!」

突然響いた女の声。
シュタインが飛び付いたのだろう。
オレは小さく溜め息を漏らしながら、その小さな影に近付く。

「ほら、シュタイン離れろ。…すみません、びっくりさせ―――――って」
「あ、やっぱり。華原君だった」
「…桜川だったんだ。ごめんね、怪我とかない?」

シュタインを足元に座らせて、押し倒された桜川を助け起こす。

「う、うん。びっくりしたけど大丈夫」
「良かった。じゃあ、暗くなってきたから早く帰った方がいいよ」
「わかった。おやすみ」
「……シュタイン、どうした?」

今まさに別れを告げて後は帰るだけのこの時に、シュタインは一歩も動こうとしない。
それどころかじっと桜川を見つめていて、その小さな掌を優しく舐めはじめた。

「…あはは。やっぱり、シュタインにはわかっちゃうのかな」

無理に作る笑顔。
……オレの作る仮面の笑顔とは、まったく違う。

「……何か、あったの?」

本当はこのまま帰ってしまいたい。
けれど、シュタインが動こうとしないこの現状では、少し難しく思う。
だからきっと、桜川がこんな笑顔を向ける理由を聞いたら、シュタインも動くんじゃないかと。
……そう思った。

「うん。ちょっとね…」
「オレは聞かない方がいい話?」
「違うの。……ねぇ、華原君ってさ、皆に優しいよね」

…………ああ、闇が、広がる。
どんどん広がっていく。押さえきれない。
疲れているからだろうか。
だから、下手なことを言わないようにずっと黙っていることにした。

「……でも」

桜川の唇が歪に曲がる。
…一瞬、自分の目を疑いたくなるような光景。
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