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□小咄
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昼休みの教室。
ドアが開くと同時に、元気な声が響いた。

「あ、圭太」
「なっちゃん。いらっしゃい」

なっちゃんは周りを見渡しながらぱたぱたとオレの元に駆け寄る。

「愛葉、いないね」
「生徒会の仕事があるとかで、今出ていったよ」
「そっか……」

お昼、一緒に食べようと思ったのにな。
なっちゃんはしゅんとして呟いた。
けれどそれも一瞬のこと。
次の瞬間にはいつもの笑顔を見せてくれた。

「じゃ、わたし行くね。バイバイ」
「あっ、待って!」

つい引き留めてしまった。
急に腕を握られて、なっちゃんが驚いた顔をした。
急いで手を放す。

「あ、ご、ごめん…!」
「ううん。いいけど……どしたの?」
「あのさ、よかったら一緒に食べない?」
「うん。食べよ」

にっこり笑って手にしたお弁当を見せた。
少しだけ、ホッとした。

「あ、でもちょっと待って」
「?」
「比呂人ー!」
「えっ」

姿を見せたのは紛れもなく比呂人センパイ。
……ま、まさか。

「よぉ」
「…」
「さ、食べに行こっか!」

比呂人センパイもいるからと、場所を屋上にうつした。



屋上について、互いにお弁当を広げる。

「何で比呂人センパイも一緒なの? もしかしていつも一緒…とか」
「あ、ううん。今日はたまたま」
「…そっか」
「早く食べようぜ」

比呂人センパイはいつも通り。
…正直この人とは食べたくなかったな……だって。

「那智、それ頂戴」
「えっ、あ、うん!」
「…………」

解ってやってんのか、この人。

「あ、辻」
「え? な、なに?」
「コレやるよ」

ピリ辛のチキン…なにコレいじめですか?
どこで知ったんだよ、オレの苦手なものなんて。

「なっちゃん、オレのも食べる?」
「あ、食べる食べるー」
「また一緒に食べようね。今度は愛葉ちゃんも誘ってさ」
「うん」
「…………」

笑顔で答えるなっちゃんの後ろからこわーい視線を感じるけど、気にしない。


「ごちそうさま」

皆で片付けに取り掛かる。

「圭太ピリ辛好きだったんだね。次の時に作ってくるね」
「お、羨ましいねぇ」
「…………ありがと」

ピリ辛克服、頑張ろうかな。




END
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