BL

□小咄
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試合終了の笛の音がグラウンドに響く。

「すっげー…」
「誠二!」

それと同時に、圭太センパイがオレの所へ走ってきた。
うわ、満面の笑顔。
さっきまでの試合してる顔とは打ってかわって、今は気さくな笑顔を見せている。

「約束、覚えてる?」
「うん。勝ったらジュース、だよね」
「やりっ。じゃ、着替えてくるからちょっとだけ待ってて!」

どの部員よりも早く部室に走っていく圭太センパイは、本当に部長なのかとか疑問に思うけど。
アレだけ動いてまだ体力残ってるんだ……とか、ある意味関心もした。

暫くすると、あの元気な声。

「お待たせ」
「…嬉しそうだね」
「まあね」
「ジュースがそんなに嬉しいの?」

そう、今日のサッカー部で紅白の試合をすると聞いたとき、圭太センパイが提案した。
――試合に勝ったら、ジュースおごってよ

「負けるとは思ってなかったけど」
「おっ。嬉しいこと言ってくれるねー」

学校の敷地内にある自販機につく。
圭太センパイはどれを買おうか少しだけ悩んだあと、ミネラルウォーターにした。
さすが運動部。オレも何か買おうかな。
少し迷って、オレンジジュースを買った。

「行こっか」

そう言うと、圭太センパイがちょいちょいと袖を引く。

「オレ、自転車なんだよね。ちょっと飲んで行かない?」
「うん」

喉乾いてたんだろう。部活のあとだし。
中庭のベンチに腰を下ろして、二人でボトルの蓋を開ける。

「生き返るー」

すると、圭太センパイが残り少なくなった水を頭からかぶった。

「センパイ!?」
「気持ちぃー」

濡れた髪をフルフルと降って、水を払う。その仕草、反則だって……。

「かっこい…」
「え?」
「…っ!」

口に出してた!?

「……アリガト」

ふっと笑って、軽く引き寄せられた。

「んっ…」

短いキス。
びっくりしてると、悪戯っぽく笑うセンパイがペロリと舌を見せて。

「オレンジ味」
「っ!」

頭の中の何かが沸騰するような感覚。

「…っ、圭太センパイ!」
「うわっ、振り回すな! ジュース溢れるっ!」

この、不意にワンコから狼に豹変する男をどうにかして下さい。
……心臓持たないから。





END
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