短編D

□永遠の黄昏
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「久しぶりです」
「アスラン。久しぶり、というのも変な感じだな」
「そ、そうですね」

 恐縮したようにアスランは敬礼をしていた手をおろした。
 彼とこうして面と向かって会うのは二度目。特別親しいわけでもなく、俺達はそれっきり会話が途絶えた。
 ラクス・クライン救出部隊、ということでクルーゼ隊長と指揮官として編成された部隊はラクス様が消息を絶った宙域へと針路をとっていた。

「心配、だよな、普通に」
「はい?」
「いや、なんでもない」

 婚約者が行方不明になっているのだから心配で当然だろう。自分の言っていることが意味不明で、俺は苦笑して適当にごまかした。

「失礼するよ」
「え?あ、なんか……すみません」

 突然謝罪の言葉を口にしたアスランに俺が首を傾げれば、彼はさらに焦ったようにすみません、と言った。

「なぜ謝るんだ?」
「いや、なんか、なんとなく」
「おかしなことを言う」
「すみません」
「……優しいんだな、アスランは」
「え?」
「兵士には必要ないが……それがお前のいいところなんだろうな」

 きょとん、とした顔で俺を見るアスラン。それも当然だろう。俺は何を言っているんだ。
 なんでもない、とまた誤魔化して、今度こそ俺はその場を後にした。
 不思議な空気を持っている。
 いや、戦場にそぐわないものだからか。
 自分にないものだから。
 そう、彼女と同じだ。
 また脳裏に浮かぶは彼女の笑顔。
 俺はどうしたというんだ。ふるふると頭を振りながら歩いていれば、背後から押し殺すような笑い声がきこえた。それを発するのが誰であるか予想がつきつつ、俺は振り返った。

「クルーゼ、隊長」
「くくっ。調子が悪いようだね」
「……」
「君がそんな風になったのは誰のせいかな?」
「……何のことですか」

 愉しそうに口角をあげて笑みを浮かべる彼から視線を外して、そう答えれば彼はまた小さな声を出して笑った。
 全ては彼の掌の上で転がされていることなのか。それが何を意味しているのか分からないが、この空気も、自分の感情も居心地が悪い。
 彼女の笑顔と同じ。
 全てを見透かされそうで恐ろしい。

「13時間後には目的の宙域に到着する。それまで体を休めておけ」

 肩におかれた力強い手の感覚。
 それが妙に現実を俺に意識させた。





 気付きたくない

 愚かしい自分の感情の
 儚いレンズ越しに
 君が永遠の昏に映る

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