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□出会ってから今までもずっとその先も
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「ごめんね杏里ちゃん、待った?」
「ううん」
「なら良かった」
私を待ってくれていた杏里ちゃんにお礼を言って、二人で美味しいケーキ屋さんへと向かう。
杏里ちゃんは知らないんだろうね。私がどんな気持ちで杏里ちゃんの隣を歩いているかなんて。
知らないままで、良いんだけど。
「今日は竜ヶ峰君と紀田君は?」
「二人とも、用事があるみたいで……」
「ふーん、そうなんだ」
杏里ちゃんは知らないよね。三人でいるところを、私がどんな気持ちで見ているかなんて。
できるものなら、三人の中に入りたかった。だけど私は入れない。どうして? そんなこと知ってる。私が歪んでしまっているからだ。
三人でいるときの杏里ちゃんの笑顔が羨ましいのに、ただの「親友」になるのが怖くって、私は三人の中に入れない。
親友は嫌なの。だって杏里ちゃんを独占したくなってしまうから。
「杏里ちゃん何食べたい? 今ならレモンパイとか美味しいと思うけど」
「ティラミスも良いかな、と思ってて」
「あそこのティラミス美味しいよー。あ、でも一押しはシンプルにショートケーキかな?」
私は杏里ちゃんのことが好き。
友達としてでなく、likeじゃなく、loveの意味……竜ヶ峰君が杏里ちゃんに抱くのと同じ意味で、杏里ちゃんのことが好きだ。
だからね、それが暴走してしまうのが怖いの。
もし一番に近くなったら、私は一番になろうとしてしまう。他の二人に嫉妬して、他の二人を傷付けて、杏里ちゃんを私のものにしようとする。
そんな醜い私には、なりたくない。杏里ちゃんはそんなことして欲しくないだろうから。
それに、私のこの気持ちを杏里ちゃんが受け入れてくれないだろうってことは、私だって分かっているから。
「ふふ、こんな風に誰かとケーキ食べに行くのなんて久し振りだから嬉しいなあ」
「他の人とは行かないんですか?」
「中学時代は行ったよ」
中学時代に一番だったあの子は、私が想いを告げると逃げて行った。
それでハッキリと気付いた。やっぱり私は異端なんだって。気持ち悪い存在なんだって。
だから、誰かの一番になりたいと思わずに済むように、高校では誰とも距離を置く――つもりだった。
「でも、高校に入ってからは初めて」
駄目だった。杏里ちゃんを見た途端、この子と仲良くなりたいと思った。
一目惚れ? ううん、違う。
この子はきっと誰のことも一番に選ばないと気付いて、私は杏里ちゃんを選んでしまった。
「私も、高校に入ってからは初めてです」
杏里ちゃんは知らないだろう。もし気付いても知らないふりをしてくれるだろう。
出会ってから今までもずっと先も。
私の恋心は杏里ちゃんには届かない、杏里ちゃんは私を愛してくれない。
「ねえ杏里ちゃん、」
それで、良いよ。
「私、杏里ちゃんと友達で良かったよ」
「……私もです」
そう言って、杏里ちゃんが私の友人として微笑んでくれるんだったら、私はそれだけで良いの。
出会ってから今までもずっと先も。
近いようで遠い、本心なんて口にはできない、そんな友達でいようね、杏里ちゃん。
(それは決して幸せではないけれど)
(不幸よりは、何倍もマシだから)
初の百合夢! 首女の子企画とめどなく溢れる愛に溺死様に提出させていただきました。
ば、場違いですけどね! 皆さんNLとか書いてるのに一人だけ百合夢って^^ 私空気読めない^^
これを機に成田百合夢の需要がもっと上がれば良いなと思います。思いますって言って言い逃げします。