白部屋2

□ゆらんゆらん、しづかなる発狂
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 ああヒルルカになりたいなあ、あの人の屈強な躰をこの身を以て支えたい。それともヒルルカの中に入ってしまおうか。まるでどこかの小説のように。
「やめとけ、殺されるぞ」
「ですよねえ」
 ガユスさんは呆れた顔をして私の頭をくしゃりと撫で、「もう帰れ」と促した。
「予備校生が咒式事務所にいていい時間じゃないぞ」
 時間はもう11時。ギキナさんは未だに帰らない。ファンの私はあの人の帰り待ちだ。
「この時間なら、どこぞの女の人と寝てますかねえ」
「だろうな」
「でもうち帰っても、居る場所ないですから」
「今からジヴのところに電話して、泊めてもらえるか聞くか?」
「ガユスさんやっさしー。あ、いいこと思いつきました」
 唐突に思いついたことににこにこするのを感じながら、私は立ち上がった。
「ガユスさん、私を殺してください!」
「はあ?」
「そして私のお肉で料理を作ってギキナさんに食べさせてください」
「俺が捕まるだろ」
「そして骨で椅子を作って、ギキナさんにあげてください!」
「だから俺が捕まるだろ」
 ガユスさんの言葉を無視して、私は考えに耽る。この身体はガユスさんの血肉に。この骨はガユスさんの椅子に。なんて素敵なんだろう!
 ゆらんゆらん、と身体を揺らしながら、私はうっとり考える。
「今更だけど、君は頭がおかしいな」
 眼鏡のフレームを抑えながらガユスさんに言われて、ギキナさんのために発狂するのも悪くないな、と感じた。





楽しかったです(にっこり)
お題はギルティ( http://nanos.jp/guilty13/ )様よりお借りしました。
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