白部屋
□You are very sweet and look like eternal juvenile.
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バントーラ図書館が解体されて一年。
別に図書館の関係者でも何でもない私は、それについて、何か思っているわけではない。思っているとしたら、今、目の前にいる男についてだ。
「……マット」
名前を呼べば、「何だい?」と返事が返ってくる。
「なんでここにいるの?」
「君に会いに来たんだ」
「貴方を匿えるだけの余裕はないわよ?」
「それは自分で何とかするさ。ただ、」
マットアラストの節くれだった手が、私の手を包む。
「君に会いたかった」
まっすぐな瞳で言われて、私は失笑しながらその手を払いのけた。
「その台詞、一体今まで何人に言ってきたの?」
「逃亡生活に入ってからは、これが初めてさ」
「それは光栄ね」
茶目っ気たっぷりのウィンクは、少しも昔と変わらない。思い出させるようなそれに、知らず知らず、私は赤面した。
「本当に、貴方って……」
「何だい?」
首を傾げる仕草も、昔のまま。
「永遠の青年みたいね」
思わずそう漏らすと、くすり、とマットアラストは微笑んだ。
「それは光栄だな」
「そう?」
「ああ、勿論」
手の甲に落とされた口付けは、これからどうしたいかという無言の合図。私はマットアラストの手を握って、指と指とを絡めた。
「貴方はきっと、永遠に青年のままね」
「君こそ、いつままでも少女のようだよ」
「お世辞はよして」
「本当のことさ」
錆びれたバーで、永遠の青年と永遠の少女が向かい合う。
そして、どちらかともなく口付け合った。
マットにしては幸せな話。