白部屋

□私の全て貴方のもの
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 目が開けたら横には銀城さんがいて私は全裸だった。いつものこと。
「おはよーございます」
 適当に挨拶すると、銀城さんは「おう」と答えた。返事はそれだけ。こちらを見もしない。でも私は慣れているから、身を起してベッドの下の衣服をまさぐった。すぐに出てきたブラを付けて、大きく欠伸。昨日の晩は寝不足だ。
「なんだ、もう行くのか」
 携帯を畳んだ銀城さんが、ちらりと私を見て言った。パンティーを履きながら、私は答える。
「もう一回しますか?」
「別に、そういうわけじゃねぇけどさ」
 そういう意味じゃないのは百も承知。それでも私はいつも同じ言葉を口にする。
「じゃあ、風引くと困るし、服着ますね」
 私は銀城さんのものだ。妙な能力を恐れた親に虐待されていた私を、親の元から救い出してくれたのが銀城さんだった。それ以来、私は銀城さんのものとして生活している。初めても銀城さんにあげた。そんなに価値は感じなかったんだけど、大事なものだと聞いたので、銀城さんにあげた。私のものは、すべて銀城さんのものだ。
「お前もでかくなったな」
「胸がですか?」
「馬鹿野郎、全体的にだよ。来たばっかのときは、あんなにちっさかったくせに」
 父親ぶった顔で銀城さんはそう言って、私の頭を抱き寄せる。されるがままにすると、焦げた煙草の匂いが頬を掠めた。
 私が自分を銀城さんのものだと言うと、リルカは決まって私を非難する。そんなの馬鹿みたい、と。彼女から見ればそうなんだろう。それでも私が銀城さんのものである事実は変わらないし、変えるつもりもない。
 銀城さんの大きな手が、子供にするみたいに私の頭を撫でる。ちょっぴりくすぐったくて、私は上目遣いに銀城さんを見上げた。
「銀城さん」
「なんだ」
「そんな子供扱いじゃなくて、キスしてください」
 私は銀城さんのもの。銀城さんも私のことをそういう風に扱う。
 でも、それでいいんだ。
 実の親に化け物扱いされるよりは、何倍もマシだから。







衝動書き。

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