背景黒

□笑う淫女
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 臨也さんのその美しいルビーのような目が好きです。その目で見られるとぞくぞくとします。蔑むような眼差しも苦痛を耐えるその色も私には毒以外の何者でもありません。臨也さんの目は麻薬です。私を虜にする赤い月なのです。
 臨也さんのその透き通るように白い肌が好きです。日に焼けない美しい色です。洋服とのコントラストが素晴らしいその肌はきめ細かで滑らかで、思わず傷を付けてみたいような、神聖過ぎて触れられないような、そんな錯覚を起こさせます。エロティックな質なのです。
 臨也さんのその夜色の髪が好きです。男性とは思えないほどに美しい髪はさらさらとしていて、指の間を通り抜けて行くことでしょう。その色合いも良いのです。ここまで美しい黒を私は知りません。
 臨也さんのその指が好きです。キーボードの上を滑らかに滑る指は細く長くそして白く、まるでピアニストの指のようです。その指が数多の情報を、そして人を操っているのだと考えると堪らない気持ちになります。爪の形もまた良いのです。整っていて、表面が艶やかで、まるで宝石のようです。
 臨也さんのそのほっそりとした腕が好きです。一見筋肉など付いていないように見えるほど細いのに、実はその腕はしなやかで、鹿の脚を彷彿とさせます。脚も同じです。絶妙な線を描き出すその四肢を見ていると、その腕で抱きしめられたいのだと考えてしまうほどです。
 臨也さんのそのお声が好きです。なんとも言えないお声なのです。それはまさに、少年の面影を残す顔立ちにぴったりだと言えるでしょう。その声で名前を呼ばれると不覚にもときめいてしまいます。興奮した時の声、特に笑い声などは、それだけで私を煽ります。
 臨也さんのその笑顔が好きです。人の悪い笑顔も、人を食ったような笑い方も、作り笑いも、子供のように無邪気で残酷な笑顔も、どれも一様に素敵です。ああ、その笑顔を無茶苦茶にしてやりたい! 当然私は臨也さんの泣き顔も大好きです。見たことはありませんが、きっと美しいに違いありません。
 臨也さんのその性格が好きです。その人として最低で屑野郎な人格が好きです。無邪気過ぎる悪意が大好きです。屈折して誰にも本当に愛されない愛情が大好きです。薄い唇から紡がれる嘘、罵倒、その他諸々全て大好きです。
 私は臨也さんの全てが大好きです。愛していると言っても過言ではありません。


「だから臨也さん、」
 組み敷いた彼の腹の上に馬乗りになった私は臨也さんの耳元で囁きます。彼の細い手首は既に手錠で拘束済みです。脚は脚で拘束しているので、逃げられることはないでしょう。
「私のものになってください」
 貴方はもう逃げられない。駒だと思っていた後輩から逃げられない。貴方と出逢ったその日から、私は死ぬ気で体を鍛えました。他でもない、貴方をこうして拘束するためです。だから貴方は私には勝てません。黒幕を気取る貴方が勝てない人物は、静雄さん以外にも実はたくさんいるのです。ええ、貴方も知っているでしょう。だから人を操るのでしょう。知っています。そんな最低な貴方が大好きです。こうして独り占めしてしまいたくなるほどに。
「嫌だよ、と言ったらどうする?」
 腕を固定されたまま、完全に逃げられないことを知りながら、貴方はそれでもその美しい顔に笑みを浮かべます。ああ、なんと美しいこと。心臓がときめいて血管が騒いでしまうではありませんか。欲情してしまうではありませんか。
「嫌は許しません」
 視界に映る薄い唇に噛みつきます。予想外だったのか、臨也さんが小さな呻き声を上げました。興奮します。無理に唇をこじ開けると、臨也さんがキッとこちらを睨みました。その表情! ああ、見たことのないものです。もっと、もっと私に見せてください。貴方の、全てを。
「変態、」
「そうですよ変態です。私が変態であることを見抜けなかったのは貴方の落ち度です、臨也さん」
「俺のことが好きなんだろう?」
「ええ、貴方のその美しい存在をこれ以上誰にも見せたくないほどに。そして私の知らない貴方を知りたいと思うほどに」
 鎖骨に噛み付いて、私は笑いました。
「愛しています臨也さん、だから私だけのものになってください」







(臨也と変態シリーズ第一弾。私が臨也夢を書く限り永遠に続くシリーズです)
(本当はどっかで「だから犯させてください臨也さん」的な台詞を言わせたかったんですが挟めませんでした。またの機会に……)

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