OTHER
□偽りは砂糖菓子のように
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「マット、好き」
名を呼んですり寄って、彼の広い胸板に顔を埋める。
「大好き」
腕を回し、その背に爪を立てる。マットは笑ってあたしの髪を掻かき上げた。
「俺もだよ」
「ふふ、嬉しい」
するすると口元に引き寄せられた髪に、小さな口付けが落ちる。心地良い。唇の端を舐め上げると、煙草の味がした。
体温。煙草の匂いに、味。快楽。愛することの喜び。会えない辛さ。全部、マットが教えてくれたもの。
「あたしの半分は、マットでできてるね」
綺麗な色の目を見つめて言えば、マットの手が頬を滑った。
「そうか」
「心は、3分の2くらい」
「そんなにか?」
「そんなに、だよ」
マットに初めての恋をした。初めて心を許した。初めて、初めて、初めて。あたしの初めてのほとんどは、マットのものだ。
「好きだよ、マット。愛してる」
「ああ、俺もだ」
「こうしていられるだけで、幸せ」
「キスしようか」
「うん、そうだね」
ごつごつした掌の感覚を感じ、それから、苦い唇があたしの唇を覆う。マットの唇は熱く、そして柔らかかった。目を閉じて、優しさを感じる。マットの手が項を撫で上げる。キスが深くなって、それから。それからを、あたしの体は知っている。全部、マットが教えてくれた。
「愛してるよ」
囁くように、あたしの胸元でマットが笑う。
「あたしも」
その旋毛に口付けて、あたしは大きく息を吸った。あたしが知らない匂い、あたしが知らない香水を。
「あたしも、愛してるよ」
全部嘘でもいいくらい、マットのことを愛してる。
普通の恋愛を……マットで書けないんだ……。