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□You make me feel so happy.You like to surprise me.
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 家に着いたあたしは、ドアを開けてびっくりした。
「あれ……?」
 仄かな甘い匂いが漂ってきたのだ。
「これは……」
 香水とは違う、もっと優しい香り。何の香りか考えていたあたしは、廊下の向こうからひょいと顔を出した人物に目を丸くした。
「おかえり」
「クリス……」
 そこにいたのは、あたしの恋人であるクリストファー。何しに来たの? と訊くまでもなく、あたしは答えに辿り着いた。
「クリス、もしかして……」
「ほら、こっちこっち」
 呼ばれるがままに歩いて行くと、食堂の机に広がる甘い物、甘い物、甘い物! プディングからゼリー、マドレーヌ、果てはガトーショコラまで。これでもかとばかりに並べられたお菓子たちに、あたしの目が点になる。
「……こんなに作ったの?」
「うん。待ってる間の時間潰しに……と思ったんだけど、思った以上に遅かったから」
「だからって、こんな……」
「嫌だった?」
 メレンゲを泡立てていたボウルを机に置いたクリスが、困ったように首を傾げる。それを見れば、怒る気も何もかもが消えうせてしまった。
「まさか!」
 そう言いながらクリスに抱き付いて、甘い香りをめいっぱい鼻腔に吸い込む。鼻面をクリスの鎖骨に押し付けたあたしは、ふふっと笑ってクリスの髪に指を絡ませた。
「甘い物、大好きよ!」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
 抱き締め返したクリスの手が、あたしの顎に触れる。持ち上げられるより先に顔を上げたあたしは、クリスの鼻に噛み付いた。
「なんか、クリスも甘い」
 そう囁くと、呆気にとられていたクリスが、「そうかもね」と声を潜めて笑う。
「一緒に甘くなっちゃおうよ」
 広がるたくさんの甘い物たちの花畑。
 その真ん中で、あたしたちは優しく口付けを交わした。







甘い物=幸せの法則!

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