背景ピンク

□He gives me hot chocolate and our kisses often taste very sweet.
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「綾瀬川君、ココア」
「今淹れるよ」
 綾瀬川君の部屋に来ると、私は必ずココアを飲む。それは習慣と言って差し支えない。
 始まりは、綾瀬川君が興味本位で現世からココアを買って来たのことだった。
 だが、買って来てみたものの、綾瀬川君は甘い物が苦手だった。嫌いなわけではない。ただ、甘い物は美容の大敵だからとあまり口に入れたがらないだけだ。本当は、かなり好きらしい。
 それはともかく。
 綾瀬川君はココアを飲みたくない。だから、時々部屋を訪れる私にココアを出すことにしたらしい。
 私は甘い物が好きだ。それは綾瀬川君もよく知っている。
 そして、ココアの虜になった私は、綾瀬川君の部屋に来るたびに、こうしてココアをリクエストするのだ。
「はい、できたよ」
 ココアができると、綾瀬川君は「火傷しないようにね」と言ってココアを渡してくれる。私はそれをちびちびと飲む。美味しくていっぺんに飲んでしまうのが勿体ないのだ。
「ねえ、綾瀬川君」
「何だい?」
「いつもココアありがとう」
「別に、これくらい何でもないよ」
 ココアを飲むと、綾瀬川君は決まって言う。
「味見させてよ」
 だから私は湯呑みを置いてそっちを向く。すると、これまたいつもお決まりの流れで、キスされる。
「甘いね」
 口付けが終わると、そう言って綾瀬川君は笑った。
「うん、甘いね」
 私もそう言って笑って、今度こちらから口付けた。
 綾瀬川君の部屋に来るたび、私は綾瀬川君が淹れたココアを飲む。そしてこうしてキスをする。これはいつもお決まりの流れ。手順みたいなもの。
 私はこの手順が好きだ。
 だって、ココアも、綾瀬川君とのキスも、綾瀬川君も、全部好きだから。








甘い物であまあま!

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