背景ピンク

□I take him pictures when he doesn’t not notice then I show them to him and I make you surprised.
1ページ/1ページ




 休み時間。
 つまらない私は、窓の外をぼんやりと眺めていた。
 私には、このクラスにあまり友達がいない。特に親しい正臣くんは、いつものようにみんなの中心でわいわいやっていて、なかなか話しかけられない。杏里ちゃんや帝人くんとは仲が良いのだが、二人は隣のクラス。次は確か体育のはずだ。
 などとつらつら考えながら、運動場をぼんやり眺める。
 すると、視界の中に、突然見知った人物が飛び込んできた。
(……あら、杏里ちゃん)
 体操服で強調されたあの胸は間違いない、杏里ちゃんだ。と、この見分け方は友達としてどうかと思わなくもないが、体育のために眼鏡を外した杏里ちゃんは、パッと見誰か分かりにくいのだ。
 ということは。
 彼女の視線の先を辿った私は、やっぱり、と思う。
(帝人くんはっけーん)
 そこには想像通り、帝人くんの姿があった。
 今日の体育は、おそらく男女ともに運動場を使用するのだろう。そんなことを思いながら運動場を見ていた私は、そうだ、と思いついてポケットからスマホを取り出した。
(えいっ)
 ぱしゃり。
 写真を撮る音が、私の周囲にちょっとだけ伝わる。でもすぐに、教室のざわめきに消えた。
(もう一枚いくか)
 ぱしゃり。
 角度を変えてもう一枚、今度は杏里ちゃんとツーショットになるように映して、私は小さく笑う。
(お似合いだなあ)
 私が好きなのは、帝人君。でも帝人くんは杏里ちゃんのことが好き。私はそれを知っている。二人はお似合いで、私に入る隙間がないことにも気付いている。
(でも、だから)
 何枚か、こっそり写真を撮るくらい、許してね。
 ぱしゃりぱしゃり、続けて帝人くんの姿を撮影していく。それから、杏里ちゃんとツーショットになっている何枚かだけ、帝人くんに送り付けた。
 視界の先で、帝人くんが慌ててポケットから携帯を取り出す。それから、びっくりした顔でこちらを見上げてきたから、私もちょっとだけ窓から身を乗り出して、手を振った。
 帝人くんの驚いた顔。
 それもついでに撮影する。
 ああ、この行為の不毛さくらいは分かっている。どんなに帝人くんの写真を所有しても、私は彼を所有できない。彼の心は杏里ちゃんのものなのだ。
(でも、写真を撮って驚かすくらいの資格は、あるよね?)
 手を振る彼にこちらからも手を振り返して、私は、笑う。
 写真を撮ることしかできない、そんな自分に対する嘲笑の心を、隠し込んで。








甘々お題ですが、今回はあえて片思いにしてみました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ