くすんだ艶色

□非・有為転変の盲目の気持ち
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「・・・ねぇ、ルーク・・・」

この大人に勝てる見込みは僕には無い。

「・・・るぅーくぅーー・・・」

生きた経験の長さとか、そんなんじゃない。

「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・大人の猫撫で声は見っとも無いです!」
「ぅっ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・今日は嫌です」

自分の事だと思えばとても簡単だ。

「・・・・・・・どうしてもかい?」
「・・・・・・・・・・・・・だって・・・昨日の・・・今日ですよ?」

何が言いたいのか分かっている。

「うん、そうだねぇ」

ホントは否定が無意味な事も、分かっている。

「・・・でも・・・」

次の言葉は、


「・・・・・・・それ程に君が愛おしいんだよ、ルーク」


思った通り。

「・・・それ程に・・・君に触れたいんだ・・・」

僕と全然違わない気持ちだ。

「・・・好きだよ、ルーク」
「・・・・・・・・・・・・・僕も・・・好きです・・・先生」



愛は、なんて立派な破壊を惹き起こすんだろうか



結局は言い包められて、抵抗なんかしない。
昨日のように口付けて、もう一度口付けて、もう一度を何度もして、先生の手の流れに身を任せていく。


高い零れる水の音と低い先生の声音がこれ程心地よく聞こえる・・・
僕はこんなに変わってしまった。
先生にこれ程痛く、きつく、苦しくされても、


「せんせぇ・・・好きです・・・・・・・」


爪を背中に立ててでも、首に腕を回して囁いだ耳元でも、何度も何度も狂ったように僕は口にした。

変わらないように変わってしまった。
これからもこの気持ちが変わる事は無い自信がある。
・・・・・・・・・・少なくとも、僕は自信がある。
「 ルーク 」
「 せんせぇ 」






寂しさを紛らわしたくて最後の声は少しだけ大きくして叫んでやった。






「先生」
「なんだい?ルーク」
「・・・・・・・・・・・・・明日は・・・やめて下さいね・・・あの・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・立てないので」
「・・・・・・・・・・・・・分かった」
「・・・・・・・・・・・・・お願いします」



ホントは壊されてもいい なんて流石には言わなかった。

やっぱり僕はこの大人に勝てる見込みは無い。




でもふと思った。

見込みが無いなら同じにすればいい と。


僕だけが先生に溺れるんじゃない
僕が先生を溺れさせればいい
これからずっと
僕が誓える永遠を賭けて

この大人を 僕と同じほど変えてやればいいんだ



先生の腕の中で、こっそりと笑って、僕は眠りに落ちていった。





(だけど
その時の僕は完全に忘れていた。

『先生の事は"自分の事"のように思えばいい。』

そう思ったのは自分なのに・・・
そしてその考えが、よく当たっている事なのに・・・)



eND.

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