くすんだ艶色
□生きた"人"を愛しているだけの話
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「これで言うのも最後だぞ!?ほ・・・本当に、あんたはいいんだなッ?」
「君もなかなかにしつこいね・・・そう何度聞かれても私の答えは同じだし・・・・
それにこの状況・・もう諦めたらどうだい?」
私に組み敷かれている彼は押し黙ってしまった。
この体勢になるまでも同じ押し問答を繰り返してきた、
・・・やはり口を開いて出てきた言葉は同じ。
「・・・解んない・・・なんで・・・ボクみたいな人形に欲情するんだ?」
拒む理由は納得出来るが・・・生憎、それは何度聞いても埒の明かない。
「どんなに精密だろうが・・・ボクは人じゃない、所詮は"物"なのに・・・どうしてなんだ?」
「・・・・・・まるで私がただ精密なだけのオ人形である君を性欲処理だけの為に必要としているように聞こえてしまって・・・・・・心外だな」
敢えて私は意地の悪い言葉を選んだが、理解に悩むのは当然の事だ。
彼らは(推測で彼以外の数人もそうなんだろう)、愛欲の思想を認識しても行為の結果を必要とはしない
基より感覚があっても機能はない
(まぁ試す機会も必要もなく確証は言えないらしい・・・そう口篭っていたが)
そう、言わば"ただの人形"だ。
「確かに・・・君にとっては機能の無いこれからの行為が無意味だとは十分承知出来る。そしてしているつもりだ。
だがそれでも私は、我が儘だが君を"生きている"として捉え、惹かれ、欲したいんだ。勿論、はっきりと言うが綺麗事で済ます事が出来ない性的な意味でも。
例え君が自身で物と主張しようと、ロイ・・・"ロイ・ランフォード"と名の付いた、生きている君を・・・・・私は愛しているんだよ」
大きな眼鏡の奥の瞳は私を見据えていたが、最早何も言わなかった。
素直に了解を認めたくないのが私の知る彼の性格だ。
口を長く塞いだ後の溜め息とは明らかに違う素振りをわざわざするものだから、私は冷静を努めなければならなかった。
「・・・もう一つ聞きたくなったが、よくそんな寒気がする事を言えるもんだな」
捻くれた文句は相変わらずだったが、今までのような抵抗の兆しは無くなっていた。
自分で言っといて何だが、彼の精密さは想像以上だった。
舌と指で意地悪く彼の身体の隅々を掻いていく・・・それの反応には彼と、当然私の情欲を煽るのには充分過ぎていた。
「舐めた心地も触れた感触も、どの箇所も本当に人のようだ・・・」
「・・・言葉と感触のセクハラはもう十分だろ・・っ・・・」
彼は私を見ようとはせず、表情と言葉を剥れさせていた。
(勿論、大方の予想はしていたが)
「君の触り心地があまりに良くてね・・・ついつい舐め続けて責め立てたくなってしまった」
「・・・・・・・・・変態だな」
「・・・・君は素直じゃないね」
溢れ出させることが出来なくても、私が舐めた後を猥りがわしい音を鳴らして手で掻き立てる度にちゃんと声と身体を跳ねさせる
「・・・・・・・・・・嫌いにでもなった?」
彼の言葉と身体の反応は、正しく正反対なのを私は解っている
「まさか・・・私は君の事をもっとよく知りたい・・・」
声を上げるのを羞じる口に私の親指を咥えさせる
「・・・もっと・・・ロイを解りたいからね・・・・・・」
痛みに耐えれなければ噛んでくれても構わないのに
噛まないように気遣う君を私はちゃんと知っている
深くまで・・・(叶うのなら全ての限り)
君の事を 私はよく見ているつもりだ
果てさせるものなど持たない彼を、私は溺れさせた。
「・・・贅沢を言えば、名前の一度くらいは呼んでほしかったんだがね、ロイ」
「・・・・」
「・・・ロイ?」
「・・・・・駄目だ、やっぱり人形なんて結局意味が無けりゃただの物だろ?そうとしかボクには考えられない・・・」
「・・・解らないなら何度でも聞いてくれたらいいよ。君が納得のいくその時まで、私は答えよう・・・私が君をどれほど好きなのかも・・何度でも、何度でもね」
頬に口付けるとまた憎まれ口を開かれるかとも思ったが・・・
「・・・・・・ホントに、あんたの考えってよく解んないよ・・・・・・・・・・」
長い沈黙の後に口篭って呟いてくれた言葉を聞いて、私は嬉しさに負け顔を綻ばせてしまった。
その後の憎まれ口は 当然 承知の上だ。
eND.