ONE DAY
□SLEEP
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「ねぇ。起きて…」
ためらうような、ひそやかな声が俺を呼び起こす。普段なら、一度眠ったら朝まで目覚めることはない。
けれど。
この声だけは、俺に届く。
起こされるようになったのは、いつからだったか。そして、これから起きることは夢なのか、現実なのか。それすらもよく分からなくなってきた。
惰性か、愛なのかさえ分からない。けれど、この瞬間が来るのを心待ちにしている俺がいた。
「…ん」
「起きてるんだろ?俺を見て…」
少しの悪戯心で目を閉じたままでいたら、泣きそうな声で体を揺らす。
目を開けば、普段から想像もつかない儚げな空気を纏ったチャンソンがいた。
月に一度、チャンソンは狂う。
女のように俺を受け入れ、乱れる。その痴態を知るのは俺だけ。朝になれば、何事もなかったかのように天真爛漫なマンネのチャンソンに戻る。
「…どした?」
「抱っこ…」
体に巻きついていた肌かけをどけ、腕を広げると、嬉しそうにチャンソンが首筋に顔を押し付けるように抱きついてきた。
「…いつもより痩せてるね?いまは俺の方が筋肉あるみたい…」
むずがる子どものように顔を摺り寄せながら、チャンソンが呟く。
「ドラマ終わったら、また鍛えるさ」
「…ね、ポッポして」
言われた通り、額、瞼、そして唇にキスを落としていく。唇にキスする時点で、チャンソンの瞳は濡れていた。
「ね、もっと…もっとたくさんポッポして、俺を抱いて」
そう言って深く舌を絡めてきた。
徐々に、お互いの体温が交わり始める。
俺の上で、チャンソンが声を殺しながら快感に踊る。目尻に涙を溜め、自分のいいように動き、俺はその快感に耐える。
「んんんっ!」
俺の腹に体液を撒き散らしながら、チャンソンが果てた。それを見ながら、今度は俺が萎えたチャンソンを刺激しながら、腰を突き上げる。
「ひぃっんっ!あぁ!!」
「隣に聞こえるぞ。ガマンしろよ」
「ゴメッ。でも、気持ちいぃ」
自分の胸や自身を刺激しながら、また快感に酔い始めている。今日は対面座位でいるからか、すぐキスをねだってくる。この体位もいいけど、下から乱れるチャンソンを見上げるのも悪くない。
突き上げた腰が、チャンソンのイイところをすったのか、体を震わせ懸命に声を堪えている。その様子にサディスティックな感情が芽生え、俺はそこを攻め始めた。
「ふっぁあ!」
「いいのか?声…」
「や、やめ…」
「気持ちいいんだろ?」
「イジワル…ああんっ」
艶っぽく濡れた目で睨まれても痛くもなんともない。ますます俺を煽るだけだ。
「も、やだ…」
「どの、口でそんなことを言うんだ?」
とろとろのチャンソンをこするとガマンできなくなったのか、俺の首筋に噛み付いてきた。
「…ッァんぅ!ッふ…」
元々、親しくなると誰彼構わず噛み付くクセがあるチャンソン。普段は力加減ができても、SEXのときは加減が出来ず、思い切り噛まれる。歯型もくっきり残るし何よりも痛いが、俺はこの痛みをただ受け入れる。
「…気持ちいいって言えよ。そしたら、止めてやるよ」
噛み付きながら必死で快感に耐え、首を振るチャンソン。ギュッと閉じた目からは涙が零れている。
「ぁあんっいいよぅ…もっと、してぇ」
耳元で、必死に声を抑えながらねだる艶を含んだ声に俺自身も反応する。
「…いい子だ。ご褒美をやるよ」
一度、体を離し体を反転させる。不安げに彷徨うチャンソンの手をとり、指に口付けて再度離すと、キスした指をしゃぶり蕩けた笑顔を見せた。
「ちょーだい…いっぱい、気持ちよくして」
肩にチャンソンの足を乗せ、またチャンソンの中に入る。俺に慣れた体は快感をねだるように締め付けてきた。
「ふっっふ、ぅうん。んーッ」
「っくっ!ホラ、もうイ、キな…」
「だ、だして、中にいっぱい出してぇ…」
チャンソンから出ようとしたが、阻まれ締め付けられる。結局、チャンソンの希望通り中で欲望を解放した。
「っはぁ、おなかが熱い…」
「おい、離せよ」
俺の腰に巻きついたチャンソンの足を叩くが、緩むどころかますますきつくなった。
「もっと、して。一回しかイッてないでしょ?俺の中でもう一回、ね?」
そう言いながら腰を揺らし始める。欲望を放ったばかりで敏感な体に目もくらみような快感が襲ってきた。
拒否権のない俺は、快楽に染められまた、チャンソンの体を突き上げる。
カーテンの隙間から見えたのは大きな赤い月だった。
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妄想赴くままに…。