他ジャンル小説

□真っ暗闇にヒカリを*
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※軽くアレンが嘔吐しています。
 苦手な方は決して読まないで下さい!











 
眠れない夜。閉じられた扉の向こう、長い長い廊下はシン… と静まり返っていて。閉鎖された空間はただ真っ暗で冷たくて、今日は雲に覆われているのか、窓から射す僅かな月明かりさえも見る事が出来ない。カチ カチ と機械的に音を発てて時を刻む時計が無性に怖くなって、ガチャリッ!と乱暴にその無機質な乾電池を抜き取った。

(…うん、これでよし!)

それから漸く真っ暗で冷たい部屋に静寂が訪れて、それまで詰めていた息を はぁ、と小さく小さく吐き出した。


最近、どう言う訳か夜中になっても眠れない事が度々ある。それは眠たくないとか、別にそう言う理由(わけ)ではなくて。ただ漠然とした何かがそこにあるような感じがして、なんとなく寝付けないのだ。…まぁそう言うのも実は明け方までなんだけど、取り敢えず陽が昇って部屋一面が黒から白に変わるまで、僕は今日もベッドの上で膝を抱えながら朝を待つ。そんな生活がここ2週間くらい続いていた。



朝陽が昇り、真っ暗だった部屋に明かりが溢れる。冷たく凍てついていた空気も少しだけ温かくなったような気がした。それから漸く訪れる強い睡魔。こくり、こくり、と揺れる頭を無理矢理に左右へ振って、寝るな!とばかりに意識を集中させる。いつもならこのまま昼を過ぎるまで寝てしまう事もあるが、今日はこれから任務がある。手をついてベッドから降りると、ふらふらする足取りで洗面所に向かい、ボーッとしていた意識を覚醒させる。その時 チラリと目の前にある鏡を覗くと、うっすらと目の下に隈が浮かぶ、僅かに顔色の悪い自分と目が合った。

(あ…、ヤバい。巧く誤魔化せるかなぁ…)

もう一度タオルで目元を拭いて思案する。今日一緒に任務に向かう彼は、そこに属する者の性分なのか、何かしら隠し事をしていたりすると何でも直ぐに見抜いてしまうのだ。でも…まぁ、大丈夫だろう。これでも僕は元ピエロだ。ポーカーフェイスも嘘も苦手じゃない、寧ろ得意だったりする。だから… うん。きっと大丈夫。

誰かが洗面所に来て鉢合わせしてしまわないように足早にその場を離れると、手早く着替えを済ませて食堂へと向かった。正直ここ最近まともに寝ていないせいか、不思議とあれ程あった食欲が感じられない。けど極端に減らす、ましてや食べないともなると直ぐに疑われてしまう。

…よし。ここは肉類やパスタ類はホドホドにして、野菜を食べよう。そうしたらもし誰かに疑われても「最近 太っちゃって、健康思考にしてみた」なんて言えば大抵は納得してくれるだろう。後はみたらしも少なめにして、マンゴープリンを増やす。
うん、今日はそれでいこう。大丈夫。

「ジェリーさん、おはようございます!」
「あら、アレンちゃん おはよう♪今日もいつもと同じメニューでいいのかしら?」
「んーっと、…あ!今日はお肉の代わりに少しお野菜を増やして貰っても構いませんか?後 今日はみたらしよりも爽やかにマンゴープリンが食べたい気分です!」

にっこり、笑って言う。そうしたら不思議そうに「あら。どうしたの?」なんて言われるものだから、そのまま表情を崩さずに先程考えた言い訳を言ってみる。

「それが最近太っちゃいまして。筋肉とかならまだ良いんですけどね、神田にも勝てますし!………うーん。寝る前にこっそり食べてるドーナツとかクッキーがいけないんですかね?」
「あらま、そりゃーアレンちゃん太っても仕方無いわよ。じゃあ暫くこのメニューにしときましょうか?」
「うー…、はい。それでお願いします。」

今度は渋々、と言った表情を作ってみる。そうしたらジェリーさんに「もう寝る前は食べ物を口にしちゃ駄目よ!」と怖い顔で念を押されるから、嗚呼 騙せたんだな。と少し安心した。

それから沢山の料理を手に席に座る。今はまだ少し早い時間だからか、食堂にいる人数も少なくてどこかホッ…とした。ここが人で溢れる前に立ち去らなくては!そう思うと、目の前に高く積み上げられた料理をパクパクと無理矢理に胃の中に押し込む。ぐるぐるといろんな物の味が混ざって気持ち悪かったけど、吐き出す訳にもいかないから必死に食べた。

その頑張りもあってか食べ始めてからものの15分で食べ終わってしまった。(凄い、新記録かも!)なんて思いながら片付けた食器をジェリーさんに渡すと「あら、今日も早かったわね。」と言われて、思わず苦い笑いが漏れた。


 
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