おお振り小説

□しあわせポッキー
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「みーはし、」

ふと名前を呼ばれた。
なんだろう?と理解すら難しくなってきた古典の問題集から目を離し顔を上げると、「はい、」と口の中に何かを入れられた。

「?」
「ほら、今日はポッキーの日だから」
「ほっひーの、ひ?」
「そ。例えばこうしてポッキーを横に四本並べるとするだろ?そうしたら数字の1が四つ並んでいるように見えるから、だから11月11日はポッキーの日。」

一本ずつ、オレに分かり易いように机の上にポッキーを並べながら話してくれる栄口くん。問題を解いている時も思ったけど、やっぱり栄口くんの教え方は分かり易くっていい、な。

「栄口くん、は すごい、ね!」
「ははっ 別に俺が考えたわけじゃないから、俺はなにも凄くないよ」
「ちっちが!おし、 うまっ…!」
「え?……ああ、教え方ね。うーん、自分では良く分からないけど。でも三橋にそう言ってもらえたら嬉しいよ。ありがとう」

にこり、と栄口くんが笑う。オレもそれに釣られるように笑ったら、また初めと同じように開いた口の中にポッキーを咥えさせられてしまった。

だけど今度は少し違ってて。オレが咥えているのとは逆の、チョコが付いていない先っぽを栄口くんがパクリと咥えると、何故か栄口くんはそのままポッキーを食べ始めた。

(…えっ…!こ、これ じゃ、キス……///)

もうどうすればいいのか分からなくて。
オレはギュゥゥッと目を閉じると、この後に来るであろうことを考えて顔がどんどんと熱を帯びていくのを感じた。

(うぅ〜っ///)

だけどいつまで経ってもそれは来ない。
代わりに直ぐ近くからクスクスッと笑う声がして。次の瞬間にはポキッと音がしたかと思うと、真っ暗だった視界に少しの明かりが差した。

「くすくすっ 三橋の顔、リンゴみたい」
「…!!」

言われて頬を突かれる。それに慌てて目を開いたら、楽しそうに頬杖をついて笑う栄口くんと目が合って恥ずかしくなった。
思わずパクパクと口が動く。そうしたら中途半端に咥えていた欠片が落ちて、代わりに栄口くんにキスされた。

「みーはし。そんなに可愛いとポッキーみたいに食べちゃうよ?」

チュッ、  今度は頬っぺた。

「さか…っ……」

チュッ、  鼻。

「うん?」

チュッ、チュッ、  瞼。おでこ。

「………」
「三橋?」

言って顔を覗かれる。きっと、真っ赤だ。

「いいの?何も言わないと……俺、本気で食べちゃうよ?」

少しだけ困ったような瞳。それがなんだか可笑しくて、オレはちょっぴり笑いながら頷いた。

「栄口くん、になら… いい、よ」

恥ずかしい、とか。胸のドキドキが聞こえちゃわないかな、とか。それまではいっぱい色んなことが頭の中をぐるぐるしてたけど。なんだかそれも今は良く分からない。

「ね、三橋。もう一回だけコレ…、一緒に食べようか?」
「う… うんっ!」

栄口くんの腕の中、一緒に食べたポッキーはすごく甘くて。すごく幸せだった。







         しあわせポッキー





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一日遅れのポッキー&プリッツ記念^^

最後の最後でムリヤリ軌道修正してやった


2010/11/12
 

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