おお振り小説
□初めてをくれた人
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オレに初めて野球を教えてくれたのも、
オレに初めて笑顔を与えてくれたのも。
ぜんぶぜんぶ、優しい笑顔のあの人でした
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「三橋、はよ〜」
教室に着いて、初めに挨拶をしてくれるのもこの人。泉くんや田島くんとは朝練前に挨拶をするけど、やっぱりオレの中の一番はこの人だ。
「おは、よっ ハマちゃん!」
ふへっ
そう笑ったらハマちゃんも同じように笑って、オレの寝癖でくしゃくしゃだった頭を優しく一撫でしてくれた。
なんだか心までぽかぽかしてくる。
「おい、いつまで触ってんだクソ浜田」
「そーだぞ!三橋はゲンミツに俺んだ!」
「は?オマエのでもねーから、」
だけどその手は直ぐに後ろに立っていた泉くんに外されてしまって。折角ぽかぽかだった心が変な音を発てて崩れていく。
― さみしい、な
(そんなの、オレのワガママだけど…)
本当は少し手を伸ばしたら届く距離にいる筈なのに、どうしてこんなにもハマちゃんを遠くに感じるんだろう。
伸ばしかけた右腕に力を込めて、泣きそうになる顔をそっと俯けた。
(このまま席に戻っても、たぶん誰も……)
“気付かない”、そう思ったのに。
「みーはし、どした?腹でも痛いのか?」
また、さっきみたいに少し身長を屈めて、顔を覗き込んで。よしよしって、やさしく頭を撫でられた。
「そんなにイテーのか?ほら、泣きそうな顔してっぞ、」
今度は目元をごしごし擦られる。
ちょっぴり痛かったけど、それもハマちゃんにしてもらってるんだと思ったら嬉しくて、なんだか分からないけど「ふひっ」て笑ってしまった。
「ん、笑えんならヘーキだな」
「あり がと!ハマちゃんっ」
なんだか、また胸の辺りがぽかぽかする。
ハマちゃんは本当に不思議な人だ。
だって、オレがどんなに寂しいと思ってたって。それをハマちゃんは直ぐに笑顔に変えてくれるから。一緒に、笑ってくれるから。
だから オレは ―――
「ハマちゃん、が 大好きっ だ!」
初めてをくれた人
(今度は、
オレがあなたの初めてになりたい)
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勿論後ろでは泉と田島が大激怒。
浜三、と言うよりは浜←三なので、それを知る兄二人は“今は”静かに見守っているわけです^^
2010/11/30