「ごめんなさい。アナタとは付き合えないわ」 「えっ!?何で!?」 ユチョンは初めてだった。 今まで告白するすべての女性に断られる事なかったユチョンは今、目の前にいる女性にフられてしまったのだ。 ロマンチックな場所を探し、おいしい食事をしながら、良い雰囲気を作り上げてこんなシチュエーションで、今まで誰も断らなかったのに…。 「何で?オレの事嫌い?」 「いいえ、違うわ」 「じゃぁ、付き合おうよ!」 「無理よ」 「どうして?オレは君が好きだよ」 「ふふっ」 ユチョンと肩を並べて座っていた女性は、優しく微笑みながら「ウソつきね」と言った。 「アナタ、ウソついてるわ」 「ウソなんかついてないさ!」 また女性は笑ってこう言った。 「アナタ他に好きな人いるくせに。」 「‥‥!?」 「いつも思っていたの、私と一緒に居るのにアナタは他の人の事を考えていて上の空、その子の事を忘れるために他の女と付き合っているように見えるわ」 「‥‥」 「図星ね」 「まさかぁ〜」 ユチョンは眉を下げて笑って言ったが、女性はすべてを見透かすような目で笑った。 「こんなトコにいても良いの?」 「え?」 「その子今一人で寂しがっているんじゃないの?」 カクテルが入っているグラスに口を付け一口飲むと、女性はユチョンを見て微笑んだ。 チラッと腕時計を見ると、もうすぐ22時を回るころだった。 …………………………………… 「ごめんなさい‥‥、僕には今好きな人が居て‥君とは付き合えません」 「やっぱり‥」 「え?」 「答えは分かってたわ」 仲の良い女友達に近くの公園に呼ばれたジュンスは、突然の告白に戸惑いながらも断りの言葉を告げた。 しかし、その女性からは「分かってた」と言われ、その言葉の意味がジュンスには分からなかった。 「だってジュンス君いつも他の子の事考えてるんだもの」 「えっ?そうかな?」 「うん!それにジュンス君に告白する女の子みんな断られるって有名だったし‥‥」 「そう‥?」 「うん!長い間1人の人に片想いしてて、一途って有名だし! でも、気持ちだけ伝えてスッキリしたかったから私は告白して後悔してないわ」 別れ際に、ありがとうと告げた女の子は、大きく手を振りジュンスと別れた。 ジュンスは、女の子が言った事を思い出す。 『他の子の事考えてるんだもの』 確かにそうだった。 ジュンスには好きな人が居た。 でも、それは叶わない恋だという事も気付いていた。 その子はいつも夜遅くまで遊び回っていて、特定の子とは付き合わず自分とは正反対の性格なのに、ジュンスの事を気にかけてくれる優しい心も持っている人。 でもそれはジュンスにだけ優しいってわけじゃない。 みんなに優しくてジュンスの胸は苦しかった。 ただそれだけが叶わないと言う理由ではなく、本当の理由は、好きな相手が『男』と言うことだった。 女遊びが派手で、会う度に女の子が変わっている事もあった。 そんな人を好きになってしまったから、同じ男のジュンスが相手にされる訳なかった。 「今頃、告白してまた新しい女の子と付き合ってるんだろうなぁ…」 ジュンスは、好きな相手を想い1人公園でブランコに腰掛けて、夜空を仰いだ。 …………………………………… ユチョンは今までこんなに走った事なかった。 さっきまで一緒に居た女性に「早く行ってあげなさいよ」と煽られ、ユチョンは女性に「ごめん」とだけ告げると一目散に走り出していた。 いつも見慣れた景色を走る。 全速力で走る。 途中、色んな人にぶつかりながらも、ユチョンの足は止まらなかった。 早く! 早く会いたい!! そんな気持ちでいっぱいだった。 好きな人がいる真っ白い家を目指す。 アイツどんな顔するかな? そんな事を考えると、自然と笑みがこぼれた。 …………………………………… 「さむっ!」 薄着のまま公園に来ていたジュンスは、辺りの温度が下がって体が冷えてきていた。 帰ろうと立ち上がり、公園を出たところで、誰かに呼ばれた気がした。 振り向くけど誰も居なくて、暗闇を眺めていた。 足音が聞こえる。 目を細めて、その暗闇をずっと眺めていると人の気配を感じた。 「ジュンス!!」 ジュンスの名前を呼ぶ声には聞き覚えがある。 姿はまだ見えなくても、声だけでわかる。 「ユチョン!!」 ジュンスは声のする方に駆けていくと、両手を広げたユチョンの姿が目に入った。 駆け寄ってきたジュンスを、広げていた両手で思いっきり抱き締めるとジュンスの冷えた体が走ったせいで熱くなっていたユチョンの体には、心地よかった。 「ユチョン…、どうしたの?」 ハァハァと荒い息でジュンスを抱き締めているユチョンの着ているTシャツは汗で湿っていた。 やっと会えたのに、いざ目の前に好きな人が居ると、足が竦んでしまう。 今まで色んな女の子を口説いてきたときは、こんな事一度もなかったのに。 ジュンスは、心配そうな顔でユチョンを見上げている。 ジュンスに見つめられて胸の当たりがじんわりと熱くなってくる。 こんな気持ち初めてでユチョンは、泣きそうになっていた、 「オレさぁ……」 やっと出た声は擦り切れそうな程小さくて、壊れそうだった。 ジュンスの事が好きなんだっ! 言えずに口ごもっているとジュンスが微笑んだ。 「フられたの?」 「‥え?」 「それぐらいでメソメソするなんてユチョンらしくないよ!」 ジュンスは、ユチョンの手を引いて歩き出した。 「どこ行くの?」 ユチョンは不思議に思いたずねる。 「ちょっと散歩しよっ。ユチョンが元気になるまで一緒にいてあげる。」 そう言って微笑んだジュンスは、ユチョンの手をギュッと握り締めていた。 ねぇ、ジュンス‥‥ もし、オレがジュンスの事好きって言ったら、同じように笑って「一緒にいてあげる」って言ってくれる? 手だけじゃなくて心も繋がればいいなぁ‥‥。 END ―――――――――― 長くなっちゃったぁ〜!! ちょっと無理やり終わらせた感ありますが‥‥ 大目に見てください(笑) |