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□全てを亡くしてしまいたい
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「…え?」
「だから、今いった通り。別れよう」
今日はなんだかいつもと様子が違った。
今までの青年は、文句を並べながらなんだかんだで許してくれたのに。微笑を浮かべながら俺に構えなかった自分の性だというのに。
今日は違った。
青年の顔に全く表情がない。いつもの微笑も感情を押し殺した歪んだ顔も。
「…なんで、」
「なんでも何もあるか。自分で考えろよ」
そんなに青年って冷たかったっけ?って聞いたら冷めた目を向けられた。凍りつくほど、冷たい目。
今まではバレても青年が気付かないフリをしてた。俺様がそれに気付かなかったわけじゃない。
だってまた女を抱いたのかって聞いてきたもの。うんって答えたんだよねえ。もう嘘は言わないことにしたから。
そしたらこれだ。
気まぐれで付き合ってた訳じゃない。彼を愛してるんだ。否、愛してたんだ。
俺が我儘だって?知ってるよ。だけど青年が俺を愛してないんだ。青年のはloveじゃなくてlikeなんだ。
(…なーんて、そんな今さらだね)
そうだよ、俺の一方通行だ。青年は俺に付き合ってくれてるんだって分かってたよ。
「…うん。そっか。ばいばい」
こんなにあっさりだなんてね。嘘をつくなら最後まで突き通すよ。
全てを亡くしてしまいたい
(君がいないのならば)(最後の嘘もこれでおしまい)
こんなおっさん最低だわ…
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