捏造BASARA兄+α部屋

□きっと彼らは仲が悪い(笑
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きっと彼らは仲が悪い





「兄上ぇぇぇ!!」





沼田城に響く轟音に、信之は目を伏せる。
ばたばたと鳥が空へ飛び立つ音。

それが自分の弟の声だと、嫌でもすぐに分かった。


「・・・申し訳御座いません。」


ぱちん


「真田が来たのか?
・・・儂がいると、不味いか・・・。」


黒い碁石を手にして、徳川家康が笑う。
ぱちん、と碁盤が音をたてている。


「・・・なるべく早く戻ってきます。
家康様はここでゆるりとしていてください。」
「んー・・・儂も真田に会っては駄目か?」
「止めた方が宜しいですよ。」


無礼ですから。
信之は無表情で、言う。
家康は一瞬顔を強ばらせ、なら待って・・・といいかけた。






ばたばたばたばたばたばた!!



だん!!!!!







「兄上!ここに居まし・・・。」


家康と幸村の目が、合う。
信之はそれに気がつき、呆れたように問うた。


「・・・源次郎、右近はどうした。」
「右近殿は今頃、廊下で伸びていまする。」
「後で右近に土下座しろ。」


信之は立ち上がり、とてつもなく冷たい笑顔を
・・・実の弟に向けている。

しかしそんな笑みであっても嬉しいのか。
幸村はまるで犬のように、笑みを浮かべている。


「私は主君と話す事がある。
大した用事でないのなら、今すぐ甲斐に戻れ。」
「某、兄上のお顔を見たいがために、やってきました!」
「帰れ。」
「嫌で御座います!ここで引き下がれば、
兄上と会う機会が無くなってしまうかもしれませぬ!!」
「・・・私とお前は既に敵対「関係ないでござるぅぅぅ!!
兄上は某だけの兄上でござる!それは変わりようのない事実で御座います!!!」


がばり、と。
そんな音がしたのではなだろうか。

幸村は信之の腰辺りに抱きつくと、首をしきりに横に振る。
信之は本気で嫌なのか、
ぎりぎりと幸村の頭を、自分の身体から引きはがそうとしていた。


「あにうえぇぇぇぇぇ!!
どうか、どうかお考え直しくだされぇぇぇぇ!!!」
「ええい、その口を閉じろ!
・・・主君の前で靡くわけないだろう。
この愚弟。」
「後生でござる、どうか武田にお戻りくだされぇぇぇ!!」
「もう決めた事だ、揺らぐはずないだろう。」


それでも頭を振り続ける幸村に、信之は諦めたのか。
とりあえず腰に抱きついたままの弟を放って、首だけ家康に向けた。


家康は半ば呆然と、その姿を見ていた。
信之に見つめられ・・・我に返ったのか、目を見退く。


「申し訳御座いません、家康様。
・・・別の部屋でお待ち下さい。
誰か!家康様を客間にお連れしろ。」
「・・・はい。家康様、こちらです。」


侍女の一人が、笑顔を浮かべて
部屋の外に立っている。
先程まで誰もいなかったはずなのに・・・不思議な物だ。


家康は頭を掻きながら、立ち上がる。
信之の本当に申し訳なさそうな顔に、思わず苦笑して。

幸村は渋々信之の身体から離れ・・・。


すれ違い様、家康に向かって呟いた。


「徳川殿如きが、俺の兄上に、気安く話しかけるな。」
「・・・・・。」


それはそれは
ドスの効いた、低音で。
しかも口調が変わっている。

子供のようにいやいやとしていた姿は、ない。

紅蓮の鬼というより、完璧にただの鬼。
虎の若子じゃなくて、完全なただの虎。


家康は何故か幸村に気圧され、何も言えなかった。
怒ってもいいはずなのに、怒れなかった。


真田幸村から感じられた。
底知れぬ“何か”に。
怯えたから・・・だったのかも、しれない。
 

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