捧げ物
□恋人の証
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「どないしたん?千歳?」
「蔵に渡したいもんあるばい。ちょっと待ってほしか。」
といい、走ってクラスに戻っていった。
離れた肌はなんか寂しくて、自分の体をギュッと縮めた。
(…千歳、早ぉ戻ってきてや…)
寂しさのあまり少し俯き加減になってると、いきなり、後ろから抱きつかれた。
「蔵、どげんしたと?」
不安そぅな顔を煽りながら千歳が覗き込んでくる。
「いや…なんでもあらへんで?」
ただ、少しの間いなかっただけなのに寂しくなった、なんて知られたくなかった。
「ほんに大丈夫と?…寂しかったんやなか?」
自分の心中を知ってるかのような言いっぷりに、俺は唖然とした。
千歳には自分の心が読めてる気がして不思議でしょーがなかった。
「あ…え…っと、寂しかった…です…。」
そぅ言うと、千歳は俺の頭を撫でてきて、「大丈夫」と繰り返していた。
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