捧げ物
□俺だけの恋人。
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そして、授業が終わった。
「おっしゃ、千歳行くでぇっ!!」
ふふん、と軽やかなステップを踏みながら友達は前を歩く。
「ここが家ばい。」
一件のマンションの一室。
そこが俺らの家だ。
「蔵ぁ、帰ったばい。」
いつもなら、そぅ言った後に「おかえり。」の一言がある。
今日はそれもなければ、姿すら現れる様子はなかったのだ。
「蔵??」
疑問に思い、リビングへ向かってみる。
「スー…」
リビングへ入ると、可愛い寝息の音が聞こえてきた。
ひょこっと覗いてみると、愛しい顔が笑みを溢しながら寝ていた。
その姿に愛しさを感じ、軽く口へキスをした。
「んっ…」
キスの感触で起きてしまい、愛しい恋人はうすら目を開け此方を見ていた。
「あ…千歳??」
まだ視界もはっきりしていない目をこすりながら俺の名を呼ぶ。
「ただいまばい。蔵。」
また軽く今度は頬にキスする。
「…おーい。千歳ぇー…俺のこと忘れてへんか?」
その声にびっくりしたのか、目をまん丸にして存在すらなかった友達の方に目をやっていた。
「お、お客さんがいたん??;」
「あぁ、忘れとったばいね。蔵、俺の大学の友達と。」
「あぁ、えっと白石蔵ノ介や。よろしゅうな。」
友達は、俺の自己紹介に違和感があったのか、首を傾げていた。
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