恋する王子共

□恋する王子共
2ページ/13ページ


冬も近づく11月。それは本当にいきなりのことだった。

「…は?」

母さんの発言に俺、憐野紘希(れんのひろき)は口をぽかんと開け呆然としている。

「いや、だからね?お父さん海外に転勤になっちゃったの」

ちょっと待て。転勤?海外?つうことは母さんは勿論そっちについていくんだよな。
…じゃ、俺は?

「えぇ?!俺まだ高校入学したばっかだぞ!?海外とか絶対嫌だかんな!」

「嗚呼、紘希はそう言うと思ってたから連れていく気はないよ。
だから母さんと相談した結果お前には全寮制の高校に入ってもらうことにした」

そう言って父さんは俺に1冊のパンフレットを差し出した。

「音無…学、園…?ってあの超エリート校?!
無理無理無理、俺なんか受かるわけないじゃん!」

私立音無学園。中高、大学一貫の男子校で中小企業から有名会社の子息と格は色々あるが生徒の殆どは金持ちらしい。
そんなエリート校に至って平凡な俺が受かるはずない。
自嘲気味にそう考えていたら父さんは信じられない言葉を口にした。

「でもお前書類審査通ったぞ」

「だよなーやっぱ落ちて…は!?と、通った…?嘘だろ?!」

何だか今日は叫んでばっかだが気にしてる場合じゃない。

「嘘じゃないわよ?母さん楽しみだわ〜息子が男子校に通うなんて!!」

まだ決まってねぇよ、と俺がツッコミも出来ないほどはしゃぐ母・仁美。
くそぅ、貴腐人め…!




――それから一週間後に面接があって、何と俺は合格。
編入試験が面接だけなんてのもおかしな話だが、合格通知を見て驚きのあまり声の出ない俺の後ろで母さんは俺以上に喜んでいた。

母さん…見た目20代に見えるからっていい年してんだからはしゃがないでくれ。


そして俺が合格してから間もない内に二人は海外、俺は寮に。
外部生の俺は二人部屋を一人で使うことになった。

ダンボールが3箱くらいしか置かれていない部屋の運ばれていたベッドに寝転び目を閉じる。

「本当に…何で俺なんかが受かったんだろ…」

編入試験の面接は兎に角変だった。
4人程いた面接官は皆タメ口だし、俺にしてくる質問も段々学校とは関係ないものになっていく。
「趣味は何?」って合コンじゃねぇんだからさ…。

あとイケメンと美人が多かった。
見た目ホストな奴からおじいちゃん先生、中にはコスプレしてる人もいた。
あの人あれで男なんだよな…大丈夫かこの学校。

色々な思いがあったがいつの間にか俺は眠っていた。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ