小説L

□四十万記念
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「んー、ぬーう・・・ぬおー・・・」
「いや。なにこの状況。」

私の肩を揉み解している佐助が、絶望的な声色でそう呟いた。なにが?

「なんで俺様旦那の肩揉んでるわけ?揉んでるのが乳ならまだしも。」
「佐助死ね!」
「ひど!?いやでもこれが男の本音!」
「ぶっちゃけられてもこま・・・る・・・うんんー、あー、そこ気持ちい・・・」
「・・・くそっ!これが布団の中なら・・・!」
「現実逃避しないしない。」

まあ諦めなさい。と、私はえへらえへら笑いながら佐助にそういい、的確に揉み解す佐助の指にうっとりと目を細める。
眠気まで出てくるので眠らないように必死です。
ふにゃー、と頬が緩む痛いような丁度いいような佐助の力の入れ加減に、私は一瞬だけ油断した。

「っうひい!」
「は?」
「くっくすぐった!それはくすぐったい!」
「ああ・・・ここ?」
「うひゃ!あばばばちょ、やめっ!」
「・・・・。」

肩・・・というより両肩の肩甲骨の間を押す佐助の指から逃げるように、這い蹲るように逃げる。
無言のまま私の肩になお触れ続ける佐助に、私は笑って半分涙目の状態で振り返った。

「佐助っ!真面目にやってってば!」
「・・・う、うん。」
「?」
「ごめんごめん。ほい、ちゃんと座って旦那。」
「あ、うん。」

ぽかんとした表情の佐助に、私もつられてぽかんとしてしまったけど、
すぐに佐助にきちんと座るように言われたので言うとおりに座りなおす。
肩を揉み始めた佐助の指に、一瞬ぴくりと震えてしまったけれど、震える必要なんてなかったらしい。
ふえー、きもちいー・・・。

「んー、あうえー・・・きもちいー・・・」
「・・・・。」
「佐助ってば、なんでそんなに上手なのー・・・?」
「ま。俺様旦那の気持ちい所知り尽くしてるからね。」
「マジですか!すごいな!」
「・・・ほかにもいろいろしてあげようか?」
「くすぐったくない?」
「もちろん。」

ほかにもいろいろ!?マジで!?なに、肩揉みの奥義とか!?必殺技とかあるの!?
佐助の言葉に期待して、くるりと肩越しに振り返れば、佐助はにっこりと微笑を返す。
なぜだか違和感を覚えたけど、私はくすぐったくないの言葉を聴いてこっくり頷いた。

「・・・じゃ。お望みどおりに。」

耳のそばで、少しかすれた佐助の声。
どきりと心臓がはね、肩をすくませれば、くるりと体を方向転換させられ、勢いのまま押し倒される。
え、と思ったときには、私の上には佐助が覆いかぶさっていて、口角を引き上げた楽しそうな顔を私に向けていた。

「・・・ええええいやいやこの状況なに!?」
「読者と俺様が望む最善の体制?」
「当初の目的と大幅にずれている気がします!」
「むしろこれが目的だけど?」
「そんなの聞いてない!」
「アドリブだからね。」
「嘘ぉ!?」

楽しそうな佐助の顔に、私は恥ずかしいような変な気分になって、思わず視線をそらす。
こういうときって、美形ってずるいと思う。すごくきれいなんだもん。格好いいんだもん。直視できなくて困る。

「だんな、なに目ェそらしてるわけ?」
「っみ、耳っ・・・!」
「ん?・・・ちゃんと知ってるよ。耳弱いこと。くすぐったがるけどさ。なめられたら感じちゃうでしょ。」
「・・・・っ!」
「言ったでしょ。俺様、旦那の気持ちいとこ、所謂性感帯、ぜーんぶ知り尽くしちゃってるから。」
「〜〜っ!?」

今晩は覚悟してね、旦那。

耳元で熱っぽくささやかれて、私はぎゅっと肩をすくませた。
結局、明日の朝まで性感帯の一つ一つを念入りに弄繰り回されたのでした。










君のことなら何でも知ってる

(馬鹿猿。)
(ひど!俺様人間なんだけど!?)
(能無し。阿呆。甲斐性なし。)
(ちょっ!マジで機嫌直してよ旦那ァ!)
(しばらくシない。)
(本当にごめんなさい。)

――――――

なんて破廉恥なんだ・・・!
↑書いてる奴が何を言う( ^ω^ )

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