小説L

□四十万記念
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ぎしりと、手首がきしむ。きっと明日には赤くあざが残ってしまうだろう。
私は、瞳から溢れる涙をそのままに、冷たい石畳の上にごろりと転がっていた。

「幸村様。」

ふと、私の名が呼ばれて、するりと頬をなでられる。
いつの間に戻ってきたのか、佐助が私を覗き込んでいた。

「ごめん、な、俺、また、やっちまって、」
「・・・佐助。」
「ごめん、なさい、でもっ、俺は!」
「佐助、」

何を言うでもなく、私は佐助の名を呟く。
佐助は、ぽたりと私の顔のすぐ横にしずくを落とす。
佐助は時々不安定になるんだ。
忍びの残虐性と佐助自身の中にある穏やかな感情とが反発して、時々爆発してしまうんだ。
そんなときは私が、彼のストレス発散に使われてあげて、縛られたり犯されたり刺されたりつぶされたりとまあ、いろいろされるわけ。
痛いけど、苦しいけど、それでも佐助のためならって思える私は、きっと狂っていると思う。

「好きだよ、好きだ、幸村様、俺、あんたがすごく好きなんだ。」
「佐助、佐助。」
「だからっ、」

嫌いにならないで。

佐助は、いつもこの行為の最後にこれを言う。
私が佐助を嫌いになるわけがないのに。
たとえ佐助が私を憎んだとしても。うらんだとしても。殺したとしても。
その想いは絶対に変わらないのに。

佐助が、クナイで私の手枷だった荒縄をぶつりと切る。
私は、手が自由になったと同時に佐助の首に腕を巻きつけて、ぐいと佐助を引き寄せた。
佐助の首筋に頬を押し付けて、擦り寄るようにすがりつく。
佐助は、私の背中を支えるようにして思い切り私を抱きしめた。

「佐助・・・。」
「すき、好きなんだよ・・・」

勿論。私もだよ。

そんな言葉は今、言っちゃいけない。
今の佐助にはただの嘘に聞こえてしまうから。














泣いても無駄だよ

(佐助の発作のはなし。)

―――――
※佐助にこんな発作はありません( ^ω^ )

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