小説N

□bsr連載
1ページ/1ページ

どうもみなさんこんにちは。 
ただいま大人数の忍びに囲まれて小田原城に進行中。
馬からは降りて、手綱を引いて歩いています。

「わーん!桜が…桜がいい子にしないー!」
「…ああもう…ほら貸してごらん…」
「ぐすっ…あとで馬刺しにして食ってやるからな…。」
「…。」

私が引く馬が一頭増えました。ふざけんな。
世話の焼ける卯之助君の面倒を見ながら、忍びに囲まれているせいでピリピリしている双子をなだめつつ、私は無言で前に進む忍びを眺める。
とっても居心地が悪いです。
普段ならもっとこう…卯之助君の恐ろしい発言にもツッコミが…こう…。

それができないのは周りをぐるりと囲む忍びの所為っていうのもあるにはあるけれど、実はもっと大きな理由があった。

「…。」
「……。」

私の隣で私の顔をガン見する風魔小太郎さん。
何が楽しいのか、さっきから私の行動をずうっと…それこそ監視するみたいに見られている。うおおおお怖いようううう。

さっき、ムニルさんに「あと一人は後ろの気に入るぞ」と助言を受け、言われたとおりにその木をじろじろ見ていれば、しゅたっと目の前に下りた風魔さん。
ええええなんぞ!?とか内心で飛び上がって驚いていれば、風魔さんは心なしか、楽しそうな表情で笑ったようだった。
隠れていたのを見つけられたのがうれしいのか、それとも「は?俺の姿をたった一回マグレでみつけられたくらいで何調子ぶっこいてんの?馬鹿じゃね?」って思ってるのか。
できれば前者であってほしい。ただの願望ですオワタ!

それに、風魔さんは勘違いしているみたいだけどね。風魔さんを見つけたのっは私じゃなくてムニルさんなわけなんですよ!
いまさらそんなことも言えず、っていうかムニルさんがしゃべるとは言えない私はあえてのノーコメントだけれど、この視線は…正直言ってうざい。
よくわからない緊張で頬がひきつるけれど、一生懸命無表情を保たせた。

「…。」
「…?え、はい?」
「…。」

ぱくぱくぱく。
風魔さんの口が動く。
ゲームでも風魔さんの声が聞けることはなかったけれど、本当に口がきけないのだろうか?
伝わらない言葉に思わず眉根を下げてしまう私に、傍の藍がすかさず間に入ってくれた。

「読唇術ならできるよ。」
「マジで!?」
「うん…『馬、俺が持とう』って。」
「え、あ、でも…」

通訳してくれるらしい藍に感謝しつつ、私は藍から通じてようやく届いた言葉に返信する。
なんと、馬の手綱を引いてくれるとのことで、ありがたいけど申し訳なく思い、おろおろしていると、問答無用で手綱を、しかも二つともとられてしまう。
とりあえず、ありがとうございますと礼を告げれば、風魔さんは答えに満足そうにうなずいて、続けて口を開いた。

「『山賊狩りは残虐な殺戮をすると聞いたが、本当か?』」
「えーっと…多分…」
「『それはお前が残虐なものがすきだからか?』」
「いえいえそんな…力の加減ができなくてそうなってしまってるだけですよ?」
「『そうなのか。お前は気配を察知するのが上手そうだ。動きも早いと聞いてる。忍びになる気はないか?』」
「いやぁ…私には山賊狩りのほうが合っているというか…」

苦笑とともに適当にそう返せば、風魔さんは少しつまらなそうに唇を尖らせる。
うわ何この人マジで可愛い。思わず風魔さんの頭を抱きこんでしまいたくなるけれど、そんなことできるはずもなく私はやり場のない感動を胸中でくすぶらせた。

「『小田原にはどれくらいいるんだ?』」
「大体一週間前後お邪魔させていただければ…もしお宿がだめなら野宿をいたしますんで…」
「『きっと主ならば城の一角を貸すだろう。そこを使ったらいいではないか』」
「そんな!申し訳ないですよ!」
「『そんなことはない。』」

まるで、自慢でもするように胸をはり、口角を少し吊り上げる風魔さんに、私は苦笑してじゃあ、とつぶやく。

「もし北条さんがよしと言った時は、お邪魔させていただきますね。」
「『もしいけなくても、俺の部屋に泊めてやろう。』」
「ありがたいです!ありがとうございます!」

なんていうか…うん。
私の返事が気に入ったのか、うれしそうに頬をほころばせる風魔さんを横目に、私は少し戸惑った。

風魔さんのイメージが…なんか違う…。
なんていうか、人懐っこすぎだと思うんだよね…もしかして、油断させてあとでざっくりとか…まさか、ね…。

藍に向かって「通訳ご苦労」と告げる風魔さんと(これは翠がこっそり通訳してくれた)、「別に」とすねたような顔でそっぽを向く藍を眺め、私は困ったように額に手をやったのだった。










粉末と固形

(警戒されないわけないのは知ってたけど…これは警戒…だよねぇ?)

―――――――
タイトルは適当。
うーん…書き直すかもです。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ