波力発電(3)

□波力発電の欠点
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* 波力発電の欠点
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「波力発電は発電周波数が一定ではない」を方程式で説明しようと思ったのですが・・・。「物
理は苦手だなぁ・・・」という人も多いので、「超」簡単に説明します。

交流電気の発生の原理はファラデの電磁誘導の法則から導かれるフレミングの右手の法則から求
められる。磁石のN極とS極を対向して置くとN極からS極に向かって磁力線があって、磁束密
度Bが存在する。この磁束密度の中で自由電子が存在する銅線のコイルを角速度ωで回転させる
と交流電気出力が得られる。コイルの毎分回転数をnとすると
 速度v=πd・(n/60)[m/s] である。そこで、全起電力eは次式になる。
 e=2πdlB・(n/60)・sinθ
今更発電機の勉強をしても、新しいことはありません。詳しいことは物理の先生か電気会社の社
員に聞いてください。

要するに・・・。コイルを磁界の中で一定の回転数nで回すと、綺麗なサイン波になります。こ
れが交流電流です。航空機のエンジンはガスタービンですが、アイドルとフルスロットルでは回
転速度が2倍になります。これでは電気系統がパンクするので、CSD(コンスタント・スピー
ド・ドライブ)という変速機で一定回転にして周波数と出力を一定にしています。火力発電や原
子力発電も多分同じだと思います。自分の専門は機械系の航空工学なので電気会社のことは、よ
く分かりません・・・。

ところが、海洋の波力発電(うねり)は波高も周波数も変幻自在、同じものはひとつとしてあり
ません。ですから波の動きをコンスタントドライブで一定に変換するなどということは不可能な
のです。ラック&ピニオン方式はこの変幻自在の波を「(とにかく)磁束密度の中で自由電子が
存在する銅線のコイルを角速度ωで回転させると交流電源出力が得られる」という「ファラデの
電磁誘導の法則」だけを頼りに発電しています。従って、ラック&ピニオン方式の波力発電は、
電圧も周波数も変幻自在というか「波の向くまま、風の吹くまま」なのです。

発電機には無段変速機が付いていますので、速度コントロールはできますが、これもピーク電圧
を制御しているだけで、周波数を制御することはできません。ちょっと考えれば分かることです
が、波力発電の発電ブイは「上死点」と「下死点」で一時停止します。ですから、もともと発電
周波数が一定になる訳はないのです。これがラック&ピニオン方式波力発電の欠点と云えば欠点
です。

それじゃあ使えないかと云えば、そうではありません。交流電源から周波数を除いてしまえば良
いのです。つまり交流を直流に変換します。交流を直流に変換する電気回路は、中学生でも知っ
ているブリッジ回路です。500m×1000mの発電ファームは4800個の発電ユニットが
あります。発電ユニットには、バランスモーメントを同じにするため、左右2個の発電機が取り
付けられます。つまり9600個の小型発電機がてんでんばらばら、変幻自在の交流電流を発電
します。従ってその合成波は、何もしなくても直流みたいなものです。とはいっても綺麗な直流
に変換すると、あとの制御が楽です。

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「これでは本当に12.9kWの発電が出来るかどうか保証されないじゃないか?」と疑問に思
う人も居ると思います。もっとも(?)な疑問だと思います。自然科学というのは、先人偉人の
発見した、いろいろな物理公式で表現されますが、その前に「公理」という概念があります。そ
れが「エネルギー保存の法則」です。これに計算式はありません。

この前計算した12.9kWというのは、重力と浮力から計算される「機械的エネルギー」です。
今回は、機械的エネルギーを「ファラデの電磁誘導の法則」で「電気的エネルギー」に変換しま
すが、「エネルギー保存の法則」がありますので、機械的エネルギーの12.9kWは電気的エ
ネルギー12.9kWに変換できると考えることができるのです。

その変換方法が発電機ということになります。戦争にたとえて恐縮ですが、「エネルギー保存の
法則」が戦略で、「フレミングの右手の法則」つまり発電機が戦術に相当します。そして発電機
の「発電効率」が戦闘部隊の戦闘能力となります。理科系の開発エンジニアは、それが本能的に
染み付いています・・・。
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蛇足ですが・・・。直流を交流に変換する技術も完成され、安価に販売されています。自分たち
が高校生の頃は、「エジソンは直流電流に固執したため、送電技術で敗れた」と教わったのです
が、今では違うみたいです・・・。

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