BL 短編

□離れて行かないで…
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慌ただしく駆け降りる音。

――ダダダンッ!

その音は玄関の方から聞こえた。うるさいなぁ…と思いつつ、玄関の方へ行ってみた。


玄関の前に立っていたのは……


「マーモンッ!!」
「うわっ、ベ…ベル?」


複数の部下達とベルセンパイと……見たことない頭からすっぽりとフードを被った子……。ベルより背の小さい子で、ベルがその子に抱き着いた。


その光景を見た瞬間、胸の奥がズキンッと疼いた。


「お帰り、マーモン!」
「ベル……ただいま」


ベルからマーモンと呼ばれた人は、ベルの背中に腕を回した。
それを見てムカッとする。


「何の騒ぎだぁ?」


この騒ぎに気付いて、玄関の方へやって来たスクアーロ作戦隊長。


「ロン毛隊長〜、ベルセンパイに抱きつかれてる人、誰ですかー?」
「あ"ぁ?…………マーモン?」
「はぁ?マーモンって人は死んだって……(大丈夫か?鮫隊長)」


スクアーロはフランの言った事は耳に入ってないらしく、「マーモン!!」と、相変わらずのデカイ声で叫んだ。マーモンと呼ばれた人は此方を振り向き、スクアーロを見て、「スクアーロ!!」と叫んだ。(ちなみにまだベルに抱き締められている)
スクアーロもベル達の方へ行き、フランはその場に置いてけぼり。


――嘘……だろ?生きているだなんて…あの人が帰ってきたならば……ミーなんて、もう……

必要ナインジャン?


そう思った時、ドクンッと心臓が鳴った。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

フランは涙が滲んできて、その光景を見るのが辛くなり、その場を走って自室に入り込んだ。

目を背けた。
怖かったんだ。
ベルセンパイが遠くにいる様に感じた。盗られちゃう気がして……怖くて逃げた。


――――


ベルはフランが走って行くのが見えた。

――しまった…っ!

ベルはマーモンの背中に回している腕を解いて、フランを追いかけようとした。

「フラ…ッ!」

それはマーモンがベルの服を掴んだ事によって、阻まれた。

「!?」
「行かないで…っ、ベルッ!」

マーモンの顔は赤く染まっていて、今にも泣きそうだった。こんな顔したらベルは絶対行かない……昔からそうだったから、マーモンは演技をした。
少しだけ、ベルの動作が止まったけど……。


(でも……フラン)

フランと付き合う頃、フランが涙を溢しながら言っていたのを思い出した。


『もう、ミーの傍から離れないでくださーい』


どんな事があっても、絶対フランの傍から離れないと決めた。約束したんだ。
だから……今不安だらけのフランの元へ。

ベルはマーモンの肩を押した。

「――…ごめん」
「!」
「オレには大事な人がいるから…」

ベルはそう言い残し、マーモンを離して走って行った。

「ベルッ!」

マーモンが叫んでもベルは振り向かなかった。
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