BL 短編
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ある日の任務の前夜――。
独立暗殺部隊ヴァリアーのアジトにて――。
――コンコンッ
ヴァリアーの一員であるスペルビ・スクアーロの部屋の扉をノックした者がいた。
(誰だぁ?こんな時間に…)
と、思いつつ扉を開く。
扉の前に立っていたのは、明日任務で一緒に行動する少年だった。まだ、8歳の子供で、明日の任務が初めてになる。
少年は胸に赤ん坊を抱いていた。
「…んだぁ?ベルじゃねーか。それに、マーモン…。こんな時間まで何してやがる?」
マーモンと呼ばれた赤ん坊はベルと呼ばれた少年より先に口を開いた。
「ベルが中々寝付かなくてさ…興奮しているみたいなんだ」
「ベル、興奮してたら寝れねぇだろぉ?」
「だ…だって…」
興奮…確かにしていた。でも、その中に微かにある恐怖…。ベルにとって、初任務できっと失敗せずに上手くやれるか…と、考えて寝付けないんだろう。
スクアーロはベルの頭の上にぽんっと手を置いた。
「大丈夫だぜ、ベル。そんなに心配すんなぁ!失敗したって、責めたりしねぇよ。それに、誰だって失敗はするもんだぁ。分かったら、早く寝ろぉ」
ベルはそれを聞いて、安心したようにホッと息を吐いた。
「…ねぇ、一緒に寝ていー?」
「……あぁ、いいぜぇ」
スクアーロはベルを部屋へと入れる。
「わぁ…広ーーーい」
ベルの部屋はレヴィ・ア・タンという奴と同じ部屋なので、狭く感じる。けど、スクアーロは一人部屋だった。
「…ベル、お前レヴィに何か一言、言って出てきたか?」
「え?アイツ、もう寝てるよ?」
スクアーロはふぅ、と息を吐く。
アイツは相変わらず早寝だな、と思った。
「…アイツと同じ部屋…ヤだぁー。何か気に食わないコトあると、殴ってくるし〜。何アイツ?」
またか…。レヴィは自分より劣っている奴を見下すのが好きなんだが…自分より秀才だと思った奴は大嫌いなのだ。まぁ…誰だって自分より上なのは嫌だが…。レヴィの場合、異常な嫉妬心が芽生える。
「ねぇ…スクアーロ?」
「ん?」
「オレ、スクアーロと同じ部屋がいー」
「は!?」
スクアーロらしくない驚き様だった。いつもなら、「何言ってんだぁ?ベル」とかで交わすのに…。
「…此所来て1ヶ月経つけどさ…あのムッツリ、“新人の癖に…っ"とかって…うざいんだよねー」
ベルの言うことは最もだ。
レヴィは2年くらい此所にいる。それでも、初任務をしたのはレヴィが入隊して半年経った頃だろう。
でも、ベルは入隊して1ヶ月で初任務。ヴァリアーでは例外だ。しかもまだ8歳の子供だ。
戦闘能力はどいつもこいつもズバ抜けて良いが…ベルは8歳にして、ナイフとワイヤーの使い方を覚え、特訓して完璧に使いこなせる様になっていた。
あの滅多に他人を誉めないXANXUSでさえ、唸らせたのだ。
“殺し"に関してはベルは才能がある。今、ヴァリアーでは一番の天才だ。
だから、レヴィがベルに嫉妬を抱くのは何となく分かる…。
「…スクアーロ?」
「ん…もうこんな時間か…。ベル、早く寝ろぉ」
ベッドを指差して言った。ベルはそれに従い、ベッドの中に潜り込む。暫くすると、規則正しい寝息が聞こえた。
スクアーロはクスリと笑い、「まだ、てんでガキだなぁ…」と、言った。
「当たり前じゃないか」
スクアーロは小さくビクッとした。もう一人の存在を忘れていた。
「ベルはまだまだ子供だよ。人殺すのが快感…とか言ってるけどさ。でも、僕的にベルはいいヒットマンになると思うよ」
実際、マーモンが言ったことはよく当たる。鋭い観察力だと思ったことがある。
「さて、一つ言っておきたいコトがある…」
「…………何だぁ?」
「聞きたい?報酬くれるってコトなら、聞かせてもいいけど?」
スクアーロが舌打ちする。
「てめぇが言っときてぇことがあるっつったんだろぉが!早く言えっ!」
マーモンはハァとため息を吐く。…ったく、ため息を吐きたいのは此方の方だ!
「…ベルさ…多分、スクアーロのコト好きだよ」
「…兄貴としてかぁ?まぁな、オレら仲い…」
「違うよ。ホンキだよ…」
「!…っ、んなことあるわきゃねぇよ」
「“違う"って断言出来るかい?」
「……………っ」
スクアーロは黙り込む。