BL 短編

□スキのキモチ
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「何処か行くわけ?」

何時も喧嘩腰のベルがフランが何処か出掛けようとしている姿を見て、一気に機嫌が悪くなる。

「…はい、悪いですかー?」

「悪かねーけど…てめえ、行き先くらい言ってから出ていけよ」

「ルッスセンパイ言ってありますけどー…まぁいいや。
…女の所ですー」

これを聞いて、ベルは後悔した。
そうだ、コイツこんな女みてーな顔してっけど男だった。しかも、女慣れしてるっつーね。
妖艶な娘であれば、レヴィだったら泣いて喜ぶぞ。
でも、それは無いな。だって、男だもんな…。

「…こんな更けた時間に女ん所、行くのか?」

「ええ、彼方も夜が都合良いみたいなんでー…ミー的にもそっちが有難いですが」

含みのある言葉…全くコイツが考えてる事読めねーな。

でも…一つ言える事は、王子がフランの行き先を知ってイライラすること。
こういうキモチ…何て言うんだっけ?

「…じゃー約束の時間になっちゃうんで、ミーは行きますねー」

あ…っ

言葉より早く、身体が動いた。
ベルは行こうとするフランの腕を掴んだ。
フランが振り返ると、ベルの顔は紅く染まっていて…少し色っぽいと思った。
ベルは子供の様に『行かないで』とでも言う様に、フランの腕に両腕を絡めさせた。

「……(い、意外に可愛い所もあるんですねーベルセンパイ…)」

フランは宥める様に、ベルの頭を撫で、こう言った。

「センパイ、この用事が終わったら、一番にベルセンパイの所に行きますから…それで良いでしょう?」

フランが珍しくニコッと笑った。
ベルは少し考える仕草をして、蚊の鳴く様な声で言った。

「…帰って来てから、一緒に居てくれるなら良い…」

「!…はい、解りましたよー。
じゃあ、待っててくださいねー」

そう言って、また頭を撫でて、ベルを軽く抱き締めた。

フランは出ていく迄笑顔でいた。





―…あれ、この先程からのイライラから次は安心感…?
何なんだろう?

ベルは一瞬、頭に過ったけど、ベルにとってはまだまだ小さな事で、気付くのもまだまだ先のこと―…。



一方、フランは―…。


―…堕王子の癖に可愛いとか…ミー大丈夫ですかねー?
センパイが彼処で止めずにいたならば…気づかなくて良かったというのに…。

―…スキのキモチ…なんて。



フランはそれに気付いてから、ベルと会うのが楽しみで仕方なくなっていった。
ベルは相変わらずで、ナイフをフランに投げまくる。

「ゲロッ」




スキだなんて…思う筈なかったし予定にも入れてなかった。
でも、フランが女の所行くの止めてから、何だか心が軽くなったし。これがスキっていうキモチ何だろうな、とベルは思った。


スキだぜ、フラン。
まだ、声に出して言えねーけど、そのうち、な。








END
 

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