BL 短編

□ムカつく…けど、スキ
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パシンッ!

突然、話があるから…と、屯所を訪ねて来て出てみると、俺の彼女である神楽に頬を殴られた。

「…????」

俺は訳が解らず、殴られた頬を押さえて神楽を見た。

神楽は涙で目が潤んでいて、俺を鋭く睨み付けた。

「…っ、サイッテーアルッ!!
私が居る癖に他の女に筒抜かすなんて…っ、総悟なんか大ッ嫌いヨッ!!」

「あっ…おいっ!?」

言いたい放題言って…去って行きやがった。
つか…何だ、アイツ?
他の女に筒抜かしてる…?

「……あ」

もしかして、神楽の奴…あの時の…?

あの時とは、昨日、幕府からの命令でお偉いさん所の娘さんの護衛をしていた時。
その娘さんに話し掛けられ、幾つか喋った事があった。
恐らく、神楽はその場面を見て、誤解をしているんだろう。

「……焼きもちですかィ…仕方ねーな、俺の方から謝っときますかィ」

沖田はふぅ、と息を吐いた。
神楽を探しに行く為に、近くに居た山崎に伝言を頼み、屯所を出た。






「……っ、サイテーアル…!
総悟なんか…っ!」

神楽は適当な道に入り込み、しゃがみ込んで、涙を流れるままに流す。


―…あんなに、楽しそうに喋ってた。私よりも可愛くて…。
総悟は私よりもあの子の方が良いアルか…?

ぐす…っ

ムカつく…ムカつくけど、スキなんて…私はどうかしてるアルか?
でも、会う度、好きって…可愛いって…言ってくれて、嬉しいけど…総悟は本当に私の事が好きなのかどうか…時々、不安になる。

「…私だけ…このキモチは大きいのかな…?」

「ばーか!俺もそのキモチは大きいでさァ!」


不意に総悟の声がして、神楽は後ろを振り返る。
多少息を切らした総悟が其処に立っていた。

総悟…っ!
息を切らして…私を心配して走って探しに来たアルか…?

神楽は涙を拭い、口を開こうとした瞬間…総悟がギュウッと抱き締めてきた。

「っ!?そ…ごっ?」

「心配しやしたよ…何処にも居なくて…でも、良かった…っ」

「…………ご、ごめんアル」

総悟は軽く神楽から離れて、誤解の部分を話した。

話し終えると、神楽は恥ずかしそうに俯いた。
小さい声で、「誤解のせいで…殴って悪かったアル…」と、言った。

「いいぜ、俺も悪かった。
でも、このキモチはマジだぜ」

「????」

解らないという風に神楽は首を傾げた。
すると、総悟は神楽の耳元で「好き」って答えた。

それを聞いた神楽は真っ赤に頬を染めていた。

「わ、私も好きアルヨ…」

そして、ギュウッとまた抱き締めた。暫くそうして…家路に着いた。









END
 

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